観光研究
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34 巻, 1 号
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論文
  • ―公共入浴施設等へのインタビュー調査に基づく定性的検討―
    関谷 大輝
    2022 年 34 巻 1 号 p. 5-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国では過半数の公共入浴施設が入墨のある客の利用を断っているとされる。入墨の有無のみを根拠に施設利用を拒否することの問題点も指摘される中で、議論を深めるための客観的なデータや論考は不足している。本研究では、公共入浴施設10施設、温泉協会・観光協会2施設を訪問し、施設管理者等への半構造化インタビューによって、入墨の取り扱いに関する方針やその影響、問題点や課題を聴取して整理した。その結果、グレーゾーン的な取り扱いの実態、それによるパラドックス的な事象の発生、組織的対応の困難さが示された。また、一般利用客のステレオタイプを変容させるアプローチの検討について提案された。
  • 西川 亮
    2022 年 34 巻 1 号 p. 17-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、新型コロナウイルス感染症流行に伴い、人々の移動が制約されるなか、居住する市内の宿泊施設への滞在行動(居住市内宿泊)に注目し、その実態を明らかにすることを目的とするものである。地域との関わり方や居住市内宿泊を行なった理由、宿泊施設の選定理由、居住市内宿泊後の感情、非日常性の認識、新型コロナウイルス感染症収束後の再実施意向を把握し、それらの関係性をパス解析によって明らかにした。その結果、非日常性を認識できなくても居住市内宿泊に肯定的な意識につながれば、再実施意向を高めることが明らかになった。
  • ―質問紙調査によるモデル実証―
    南地 伸昭
    2022 年 34 巻 1 号 p. 31-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、消費者行動研究の分野で発展してきた「経験価値モデル」に基づき、四国巡礼バスツアーの参加者を対象とする質問紙調査を行い、巡礼ツーリズムに現代の巡礼者が見出している多様な経験価値を捕捉するための尺度開発を行った。その結果、経験価値の構成概念については、「神聖性の価値」および「社会的価値」、「経済的価値」、「真正性の価値」、「脱日常的価値」、「教育的価値」の計6因子、22項目が抽出された。巡礼ツアー参加者が巡礼ツーリズムの経験を通じて見出している「聖なるもの」の価値次元が「神聖性の価値」として抽出されるとともに、固有の巡礼文化を有する四国巡礼ツーリズムの地域性についても確認された。
研究ノート
  • ―人新世時代とCOVID-19を背景として―
    横山 秀司
    2022 年 34 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新型コロナウイルスのパンデミックの発生により、世界のツーリズムは大打撃を受けている。一方、今世紀に入り地球温暖化が顕著となり、温室効果ガスの排出削減に向けた対策が急務となっている。ツーリズムは地球温暖化に加担していることが明らかとなっている。世界の観光研究者はCOVID-19パンデミック後のツーリズムのあり方を議論しているが、それは脱炭素化に向け、環境に負荷を与えることの少ないツーリズムを提案している。これは1980年代に生まれたソフトツーリズムと通底する。人新世という時代、地球温暖化、COVID-19パンデミックを背景にソフトツーリズムを再考し、その重要性を論じた。
論説
  • ―博物館の文化観光推進努力義務を新設した第3条第3項のソフトローとしての影響―
    渡部 友一郎
    2022 年 34 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)が2022年4月15に公布された。博物館法が、実に70年ぶりに大きく改正され、2023年4月1日に施行予定である。法令の体系上「社会教育機関」と位置付けられてきた博物館は、博物館に求められる役割の多様化・高度化と相まって、文化観光に関する位置付けが従来不明確であった。そこで、令和4年改正博物館法は、博物館の事業を定める第3条に第3項を新設して、文化観光推進努力義務を課した。本稿は、観光学と法学の学際的観点から、研究に影響を与えうる「文化観光推進努力義務」について、行政文書開示請求により取得された文化庁作成の内閣法制局資料(立案担当者資料)を丹念に検討した上で、文化観光推進法(文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律)との関係を明らかにし、かつ、法学上のソフトローの研究から「文化観光推進努力義務」の狙いを考察する。
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