2017 年 26 巻 1 号 p. 21-25
現在,日本の対策型乳がん検診は40歳以上の女性すべてを対象としている。日本では2000年に50歳以上の女性に対してマンモグラフィが導入され,2004年に対象年齢が40歳以上に引き下げられたが,その際対象年齢に上限を設けず,現在に至っている。海外では多くの国が年齢上限を設けており,WHO のposition paper では乳がん検診の対象者として議論されているのは75歳までである。米国USPTF においても75歳以上の推奨グレードはI とされている。さらに2013年に出されたわが国の有効性評価に基づく乳がん検診ガイドラインにおいても,75歳以上の対象者に対するエビデンスは示されていない。高齢者に検診の利益を享受させないのかという議論ではなく,余命が短く他病死する可能性が高い場合,早期乳癌の検出がかえって受診者の不利益になることを正しく理解する必要がある。また,対策型検診としては集団全体の効率の問題も大きな課題である。今後高齢者が増加していくなかで,乳がん検診の対象として年齢の上限を設けることを再考する必要がある。