抄録
本論文では,わが国証券取引所に上場している製造業,卸売業および小売業の企業を対象とする郵送質問票調査から,取引処理システムと商品売買取引の処理との関係を示した仮説的な体系化モデルの妥当性を検証する。体系化モデルでは,独立型取引処理システムは棚卸計算法を前提とする五勘定法の仕訳が,統合型取引処理システムは継続記録法を前提とする売上原価対立法の仕訳が適合すると説明する。分析の結果,取引処理システムと商品売買取引の処理との適合性の仮説が妥当であることが検証され,体系化モデルと整合することが明らかにされた。さらに本論文の意義として,わが国では取引処理システム形態とは無関係に五勘定法を採用している企業が一定数あることが明らかにされた。