2020 年 10 巻 1 号 p. 38-43
〔要旨〕循環動態の安定した腹部外傷に対するnon-operative management(NOM)は成功率も高く標準的な治療となりつ つある。大阪府済生会千里病院では2011 年4 月よりNOM プロトコールを作成し,統一した管理を行っている。その有用性と問題点を検討した。2013 年1 月〜2018 年3 月までにNOM にて治療した腹部外傷126 例を検討した。ベッド上安静は3(2 〜4)日,経口摂取開始は3(3 〜4)日,NOM 完遂率は96%であった。仮性動脈瘤は13.5%に認め,11.1%に追加の血管内治療を要した。合併症は深部静脈血栓症が3.2%,肺炎が7.9%であった。死亡例は認めず,退院後の遅発性出血も認めなかった。プロトコール遵守率は19.8%であり,画像評価の基準を変え,プロトコールを改訂した。NOM プロトコールの使用は,診療の質の均一化をもたらし,医療の質の向上につながり,有用であると考える。