2005 年 9 巻 2 号 p. 7-14
本研究では,要援護在宅高齢者本人が感じる,日常家事と金銭管理の困りごとに関連する要因を,個人要因および環境要因から明らかにした.デイサービス利用高齢者を対象とし,質問紙を用いた面接調査を実施した.調査期間は2003年12月~2004年3月末日までであり,177名から回答を得た.「日常家事」と「金銭管理」の困りごとをそれぞれに従属変数とし,第1段階として個人要因(基本動作能力,健康度自己評価,認知症度,うつ傾向)を,第2段階として環境要因(同居者の有無,主介護者の有無,人間関係の良好さ,家屋内段差箇所)を投入する階層的重回帰分析から関連要因を明らかにした.その結果,日常家事の困りごとは,個人要因として健康状態への認識やうつ傾向について,環境要因として同居者の存在や,家屋内の段差について把握することの必要性が示された.また,金銭管理の困りごとは,環境的な要因よりも,健康状態への認識や認知症の症状という個人要因について把握しておくことの必要性が示された.これらの点について留意しながらアセスメントを行うことで,高齢者と介護支援専門員とが,日常家事や金銭管理についての課題を共有することができ,円滑な支援関係が築かれると考えられる.