日本助産学会誌
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原著
超音波検査法を含む妊婦健康診査に対する妊婦の認識と心理的影響
—心拍数・唾液アミラーゼ・STAIによる助産師と医師の比較—
和泉 美枝羽太 千春我部山 キヨ子
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2011 年 25 巻 1 号 p. 36-44

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抄録
目 的
 本研究の目的は,超音波検査法を含む妊婦健康診査(以下健診)に対する妊婦の認識と心理的影響について,助産師と医師の違いを明らかにすることである。
対象と方法
 対象は3病医院と2助産院を受診する正常経過妊婦215名。無記名自記式質問紙調査,健診前後に心拍数・唾液アミラーゼ・状態不安(STAI)の測定,健診の観察,出産前後の診療記録の調査を行った。助産師の健診受診者を助産師群,医師の場合を医師群とした。
結 果
 超音波検査時間は助産師8.3±4.2(mean±SD,以下同様)分,医師3.7±1.6分で助産師が有意(P<.001)に長かったが,両群の90%以上は検査時間を「ちょうどよい」とし,画像も「理解できた」「だいたい理解できた」としていた。施行者の画像説明頻度が高いのは「胎児部位」「胎児の全体像等」で,助産師が有意に高いのは「心臓の動き(χ2=5.792,P=.016)・胃(χ2=15.669,P<.001)・膀胱(χ2=49.602,P<.001)・脳(χ2=5.785,P=.021)・臍帯位置(χ2=8.605,P=.003)」であった。胎児推定体重の計測誤差は助産師9.8±8.1%,医師10.4±6.9%で両者に差はなかった。助産師が超音波検査法を行うことに対し助産師群100%,医師群95.5%は「とても良い」「良い」としていた。助産師群の健診前の心拍数は83.9±10.3回/分,唾液アミラーゼ41.0±35.5KU/L,STAI34.6±8.8点,健診後はそれぞれ80.8±10.0回/分,37.3±29.7KU/L,29.2±7.4点。医師群の健診前の心拍数は81.4±10.2回/分,唾液アミラーゼ42.5±34.1KU/L,STAI35.4±8.5点,健診後はそれぞれ78.1±8.8回/分,47.0±36.6KU/L,30.6±7.4点であった。両群とも心拍数とSTAI得点は健診後に有意(それぞれP<.001)に減少し,唾液アミラーゼは助産師群では健診後にやや減少,医師群ではやや増加した。各指標の健診前後の変動率は両群間で差はなかった。
結 論
 助産師と医師で超音波検査内容に相違はあったが,胎児推定体重の計測技術,妊婦の認識,妊婦への心理的影響に差はなく,これらの点で助産師は医師と遜色ない超音波検査法を含む健診が提供できていると考える。
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© 2011 日本助産学会
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