日本助産学会誌
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25 巻, 1 号
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原著
  • Sachiyo MIYAGAWA, Yoko EMORI, Atsuko KAWANO, Susumu SAKURAI, Takeshi T ...
    2011 年 25 巻 1 号 p. 5-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    妊婦の睡眠呼吸障害と周産期outcomeとの関係
    宮川幸代*1,江守陽子*1,川野亜津子*1,櫻井 進*2,谷川 武*2
    *1筑波大学大学院人間総合科学研究科
    *2愛媛大学大学院医学系研究科
    目 的
     本研究の目的は,妊婦の睡眠呼吸障害(Sleep Disordered Breathing: SDB)が出産のアウトカムに及ぼす影響を検討することにある。
    方 法
     妊婦健康診査を受けている妊娠28週以降の妊婦179名を対象とし,パルスオキシメータにより,夜間睡眠中の睡眠1時間あたりの末梢動脈血中の酸素飽和度低下指数(oxygen desaturation index: ODI)を算出した。判定基準はSDBなし(3%ODI<0.5),正常範囲内(0.5≦3%ODI<5),軽度(5≦3%ODI<15),中等度(15≦3%ODI<30),重度(3%ODI≧30)の5区分とした。分析は,多重ロジスティック回帰分析によって,SDBと出産のアウトカムとの関連を検討した。
    結 果
     ODI判定は3%ODI<0.5は38名(21.2%),0.5≦3%ODI<5は119名(66.5%),5≦3%ODI<15は22名(12.3%),15≦3%ODIは0名であった。したがって,軽度SDB群(3%ODI≧5)22名と正常群(3%ODI<5)157名の2群間の比較を行なった。出産歴および肥満を交絡因子とした調整オッズ比は,「自然出産」を基準とすると「予定or緊急帝王切開出産Cesarean Birth(CB)・吸引出産」での調整ORは3.03(95%CI: 1.10-8.33),「予定CB・自然出産」を基準とすると「緊急CB・吸引出産」での調整ORは5.18(95%CI: 1.44-18.65)であった。
    結 論
     妊娠女性におけるSDBは軽度でも出産のアウトカムに問題となることが示唆されたことから,自然流産歴を持つ経産婦,夜間の覚醒回数や睡眠問題について訴えの多い妊婦に対しては,パルスオキシメータによるスクリーニングを有効に活用するとともに,より安全な出産ケアの提供のためには速やかな睡眠状況の改善や睡眠問題の治療のための介入が必要と思われる。
  • 堀内 成子, 石井 慶子, 太田 尚子, 蛭田 明子, 堀内 祥子, 有森 直子
    2011 年 25 巻 1 号 p. 13-26
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    目 的
     周産期喪失を経験した母親・家族に対して,小冊子「悲しみのそばで」および,「天使キット」(別れの身支度,記念品等)を提供し,その試用経験から実用性を評価する。
    対象・方法
     探索的記述研究デザインであり,これは試作開発した教材の実用化に至るトランスレーショナル研究のプロセスである。対象は,東京都近郊の5箇所の病院において,2006年5月から2008年5月までの間に,周産期喪失(流産・子宮内胎児死亡・死産・新生児死亡等)を経験した母親である。小冊子および天使キットを使用した結果を,自己記入式質問紙を用いて評価してもらう。評価は記述統計および自由記載に関する内容分析をおこなった。
    結 果
     死産を経験した母親84名が試用し,質問紙は43名から返送された。
     小冊子に関しては,42名(97.7%)が「とても参考になった」「参考になった」と回答し,天使キットに関しては,全例が感謝を表明し,好意的な評価であった。
     小冊子に対する感想の内容は5カテゴリーに分類できた。1)〈受け入れられて,心が楽になった>,2)〈何が自分に起こっているか理解できた〉,3)〈ひとりじゃない,つながっている感覚〉,4)〈自分のペースでいい,時間がかかってもいいという保障〉,5)〈人それぞれに違った悲しみの表現があると知る〉に分かれた。天使キットについては,5カテゴリーの評価内容が抽出された。1)〈数少ない思い出の品となった〉,2)〈時機を得た支援だった〉,3)〈限られた時間の中で,遺品を残すことの後押しになった〉,4)〈大切な赤ちゃんとして扱ってもらえた〉,5)〈医療者とコミュニケーションがとりやすかった〉。
    結 論
     小冊子および天使キットは,試用した母親から良好な評価を得た。小冊子は,喪失後の悲しみについて認知・情動の理解を助け,天使キットは認知・情動・および行動を助けた。この道具は,周産期喪失による悲嘆作業を進める上での道標として実用化が望まれる。
  • 佐藤 彰子, 梅野 貴恵
    2011 年 25 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    目 的
     褥婦のバースプランの認識を調査し,出産満足度との関連を明らかにすることを目的とし,妊産婦が満足な出産をするためにバースプラン作成のプロセスの中で助産師に求められる役割について検討する基礎資料とした。
    対象と方法
     対象は産褥2日~7日の褥婦442名で,データは自記式質問紙調査を用いて収集した。調査内容は属性,分娩時の状況,バースプラン記入時の状況について,バースプランの認識(10項目5件法),出産体験の自己評価尺度短縮版(常盤2001,18項目5件法)である。分析はSPSSver.16.0を使用し,有意水準は5%とした。
    結 果
     質問紙は416部が回収され(回収率94.1%),有効回答数は370部(有効回答率88.9%)であった。出産満足度を従属変数とした重回帰分析(調整済みR2=0.361,p<0.01)により出産満足度に関連する要因として,分娩歴,分娩様式,分娩時間,褥婦から見た児の状態,医療スタッフの理解や尊重ある対応,バースプランの認識が抽出された。この出産満足度に関連する要因を調整し,分娩経過に問題のなかった群を対象に,分娩歴別での褥婦のバースプランの認識と出産満足度との相関係数を求めると,初産婦r=.326(p<0.01),経産婦r=.442(p<0.01)であり,出産満足度と有意な正の相関が認められた。また,褥婦のバースプランの認識はバースプラン記入時の相談があること,バースプランに関する情報収集をしていること,バースプランへの期待やこだわりを持っていることで,それらをしていない,持っていない場合に比べ有意に高くなった(p<0.01)
    結 論
     分娩経過に異常がなかった褥婦のバースプランの認識は出産満足度と関連があることが明らかとなった。バースプラン作成のプロセスは出産満足度を高めるひとつのアプローチであり,バースプランの活用は満足なお産を提供する上で重要であることが再確認された。
  • —心拍数・唾液アミラーゼ・STAIによる助産師と医師の比較—
    和泉 美枝, 羽太 千春, 我部山 キヨ子
    2011 年 25 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究の目的は,超音波検査法を含む妊婦健康診査(以下健診)に対する妊婦の認識と心理的影響について,助産師と医師の違いを明らかにすることである。
    対象と方法
     対象は3病医院と2助産院を受診する正常経過妊婦215名。無記名自記式質問紙調査,健診前後に心拍数・唾液アミラーゼ・状態不安(STAI)の測定,健診の観察,出産前後の診療記録の調査を行った。助産師の健診受診者を助産師群,医師の場合を医師群とした。
    結 果
     超音波検査時間は助産師8.3±4.2(mean±SD,以下同様)分,医師3.7±1.6分で助産師が有意(P<.001)に長かったが,両群の90%以上は検査時間を「ちょうどよい」とし,画像も「理解できた」「だいたい理解できた」としていた。施行者の画像説明頻度が高いのは「胎児部位」「胎児の全体像等」で,助産師が有意に高いのは「心臓の動き(χ2=5.792,P=.016)・胃(χ2=15.669,P<.001)・膀胱(χ2=49.602,P<.001)・脳(χ2=5.785,P=.021)・臍帯位置(χ2=8.605,P=.003)」であった。胎児推定体重の計測誤差は助産師9.8±8.1%,医師10.4±6.9%で両者に差はなかった。助産師が超音波検査法を行うことに対し助産師群100%,医師群95.5%は「とても良い」「良い」としていた。助産師群の健診前の心拍数は83.9±10.3回/分,唾液アミラーゼ41.0±35.5KU/L,STAI34.6±8.8点,健診後はそれぞれ80.8±10.0回/分,37.3±29.7KU/L,29.2±7.4点。医師群の健診前の心拍数は81.4±10.2回/分,唾液アミラーゼ42.5±34.1KU/L,STAI35.4±8.5点,健診後はそれぞれ78.1±8.8回/分,47.0±36.6KU/L,30.6±7.4点であった。両群とも心拍数とSTAI得点は健診後に有意(それぞれP<.001)に減少し,唾液アミラーゼは助産師群では健診後にやや減少,医師群ではやや増加した。各指標の健診前後の変動率は両群間で差はなかった。
    結 論
     助産師と医師で超音波検査内容に相違はあったが,胎児推定体重の計測技術,妊婦の認識,妊婦への心理的影響に差はなく,これらの点で助産師は医師と遜色ない超音波検査法を含む健診が提供できていると考える。
資料
  • 中島 久美子, 常盤 洋子
    2011 年 25 巻 1 号 p. 45-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    目 的
     妊娠初期の夫婦を対象に,妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識の共通性および差異を明らかにし,妻が満足と感じる夫の関わりを高める看護援助への示唆を得る。
    方 法
     妊娠初期の夫婦8組を対象に半構成的面接法によりデータを収集し,分析はベレルソンの内容分析法を参考に行った。カテゴリー分類のスコットの一致率では,夫婦の認識の共通性88.0%,夫婦の認識の差異では,妻のみの認識87.0%,夫のみの認識89.0%となり,信頼性が確保された。
    結 果
     妊娠初期の妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識として,【妻の健康と情動への気づかい】【家事労働の援助】【親になるための準備】の3カテゴリーが抽出され,夫婦の認識の共通性および差異が明らかとなった。
    結 論
     妊娠初期の妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識の共通性および差異として,3カテゴリーが抽出された。夫婦の認識の共通性および差異が明らかとなり,妻が満足と感じる夫の関わりを高める看護援助として,夫婦の間で気持ちの共有と夫婦の良好なコミュニケーションが強化されるよう夫婦に働きかけることが重要であると示唆された。
  • 渡邉 佳子, 島田 友子
    2011 年 25 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究では,多胎児の中の双子に焦点を当て,父親の気持ちや育児の実際について把握し,父親の視点から求める支援を明らかにすることを目的とする。
    対象および方法
     生後4・5か月の双子を養育する父親を対象に,半構成的面接法を行った。得られたデータの逐語録を質的帰納的に分析した。
    結 果
     妊娠期から分娩期における父親の気持ちとして,【初めて双子と聞いたときの気持ち】,【妊娠期から分娩期における気持ち】,【初めて対面したときの気持ち】の3つのカテゴリーが抽出され,それぞれに位置づく9つのサブカテゴリーが抽出された。育児期のおける父親の気持ちとして,【育児の楽しさ】,【育児の大変さ】,【育児の疲労】,【育児不安・ストレス】,【戸惑い】,【育児の心配】の6個のカテゴリーが抽出された。また15のサブカテゴリーが抽出された。父親の育児の現状として,【育児に取り組む理由】,【育児で心がけていること・工夫】,【心配や不安への対処法】,【妻と夫の相互支援】,【育児書や育児雑誌の活用状況】の5個のカテゴリーが抽出され,それぞれに位置づく17のサブカテゴリーが抽出された。父親への必要な支援として,【入院中の家族への丁寧な対応】,【対象が望む伝承への工夫】,【育児支援体制充実に向けた情報提供の工夫】の3つのカテゴリーが明らかになった。また13のサブカテゴリーが抽出された。
    結 論
     父親は育児の楽しさを感じていたが,反面育児の大変さや戸惑いなど,ネガティブな気持ちを表出していた。父親への必要な支援として,特に双子の父親の気持ちや現状を理解し,丁寧な対応で,伝承・伝達・提供を考慮した看護の重要性が示唆された。
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