日本助産学会誌
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原著
女性に対する暴力スクリーニング尺度への回答と想起した状況の分析
今関 美喜子片岡 弥恵子櫻井 綾香
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2015 年 29 巻 1 号 p. 22-34

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抄録
目 的
 女性に対する暴力スクリーニング尺度(VAWS)は,日本で作成されたDVのスクリーニングツールである。より正確で臨床適用性の高いツールを開発するため,本研究は,妊娠期にDVスクリーニングで用いたVAWSの項目について産褥期にインタビュを行い,質問項目への回答と想起された状況を明らかにすることを目的とした。
対象と方法
 7項目で構成される原版VAWSに,精神的暴力に関する5項目を加え12項目の改訂版VAWS(案)を作成した。研究参加者は,妊娠期にDVスクリーニングを行った褥婦43名であった。産褥入院中に,改訂版VAWS(案)の質問項目から想起された女性とパートナーの状況等について半構成的インタビュを行った。分析は,内容分析の方法を用いた。本研究は,聖路加看護大学研究倫理審査委員会の承諾を得て実施した。
結 果
 改訂版VAWS(案)の項目のうち,精神的暴力を問う項目は多様な認識が認められた。「もめごとが起こったとき,話し合いで解決するのは難しいか」という質問項目に関しては2カテゴリ【言い争いになる】【話し合いができない】が抽出され,「話し合い」には,一方的とお互いにという両方の文脈で語られていた。「大きな声で怒鳴ったりすることはあるか」「パートナーとの関係性の中で安心が得られているか」「彼にコントロールされていると感じるか」「あなたの気持ちを無視するか」の精神的暴力を示した項目については,3つ以上のカテゴリが抽出され,開発者の意図とは異なる認識が含まれた。さらにこれらの項目には【選択肢を間違えた】【判断に悩んだ】が含まれているものがあった。一方,精神的暴力を示す「パートナーのやることや言うことを怖いと感じるか」は複数のカテゴリが抽出されたが怖いと感じた状況が語られた点で類似しており,「壁をたたいたり,物を投げたりすることはあるか」および身体的暴力と性的暴力を示す項目は,1つのカテゴリのみ抽出された。
結 論
 精神的暴力を示す質問項目については,研究参加者によって様々な認識があることがわかった。今後本研究結果に加えて,量的データから正確度を検討し,より臨床適用性の高いDVスクリーニングツールに改訂する必要がある。
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© 2015 日本助産学会
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