日本助産学会誌
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助産所出生数の減少解明に向けた出産施設選択に関する調査研究
—マーケティングの概念を視座として—
平出 美栄子宮崎 文子松崎 政代
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2015 年 29 巻 1 号 p. 87-97

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抄録

目 的
 本研究は,助産所出生数の減少を解明する前提の調査研究とし,病院,診療所,助産所の選択理由の比較について,マーケティングの概念を用いて調査·分析及び考察することを目的とする。
対象と方法
 調査は,都内の保健センター,助産所,乳幼児教室の利用者などで,母親725名を対象に質問紙調査を実施した。分析対象は389名である(有効回答率53.7%)。調査内容は,属性要因,出産施設の選択理由,選択する際の影響要因に関する内容である。分析では出産した施設別に,大学病院·病院をA群,診療所をB群,助産所·自宅をC群に分類し,属性要因とマーケティング·ミックス4P―Product, Price, Place, Promotion―の内容を3群で比較分析した。医療におけるProductは,ケアや医療サービス,医療行為とした。調査期間は,2013(平成25)年2月から3月末である。
結 果
 高年初産婦は,A群がB·C群に比べ多かった(p=0.027)。施設を選択する際の影響要因は,A群がB·C群に比べ「35歳以上だから」という回答が多かった(p<0.001)。出産施設の選択におけるProductの内容では,C群の7割が「健診時間が長く丁寧」「自然出産」「フリースタイル出産」「出産まで助産師が付く」「母乳指導」「母児同室」を選択の理由としていたが,A·B群では3割程度であった。また,A群は「毎回医師の健診がある」「規模が大きい」,B群は「毎回医師の健診がある」「個室がある」「豪華な食事」の回答が多かった(p<0.001)。Priceでは,A群は「出産費用が安い」(p<0.001),A·B群は「妊婦健康診査公費補助券が使える」の回答が多かった(p=0.015)。Placeでは3群の半数が「自宅近く」を回答していた。
結 論
 助産所の出生数減少に影響を与えると考えられるのは,高年初産婦(35歳以上)という理由及び,助産所が提供しているProduct(サービス·ケア)と大学病院·病院群,診療所群の妊産婦が要望しているサービス·ケアに差があることである。

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© 2015 日本助産学会
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