2020 年 34 巻 1 号 p. 38-49
目 的
女性にとってのはじめての育児体験をありのままに記述し,はじめての育児体験が女性自身の人生へもたらす意味について探求すること。
対象と方法
出産後8か月を経過した初産婦10名を対象に非構造化インタビューを実施した。得られたデータは,Colaizziの方法による記述的現象学的アプローチによって,質的分析ソフトNVivo11を使用し分析をおこなった。
結 果
はじめての育児体験が女性自身の人生にもたらした意味として,【子どもを持ってはじめて感じた周囲からのまなざし】,【張りつめた日々から子どもとともに生きる親としての日常】,【探し求めている充実感】の3つのカテゴリーが抽出された。
はじめての育児を行う女性は,育児の楽しさと同時に負担感も感じる体験をし,親であることへの迷いや不安を抱きながら,親として生きること以外に個人としての充実感も求めていた。育児をするなかで困難と感じる状況では,家族や周囲の人との関わりの中で,自分を見つめる時間をもつことで,これまでには気が付かなかった新たな価値観を獲得していた。
結 論
3つのカテゴリーから得られた育児期女性への助産ケア実践への示唆として,育児期にある女性が,自分の人生において育児体験の意味をどう捉えているかを理解し,支援を行うことが大切である。また,育児期女性への支援は,育児期女性のみに向けられるのではなく,女性の家族や周囲の人をも含めた支援として考えていく必要がある。