日本助産学会誌
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原著
産後1ヶ月の母親の心理状態と尿中カテコールアミンおよびセロトニンとの関係
德永 明日香金澤 悠喜川野 亜津子
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2021 年 35 巻 2 号 p. 113-121

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抄録

目 的

産後のメンタルヘルスにおいて,産後うつ病は重篤な有害疾患である。日本では,産後うつ病のスクリーニングにエジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)の日本語版が用いられているが,リスクのあるすべての母親をスクリーニングするためにはまだ課題が残るとされている。そこで,EPDSと併用できる母親の心理状態を反映した客観的な指標を検討する必要があると考えた。本研究では,産後1ヶ月時点での母親の心理状態と尿中カテコールアミンおよびセロトニンとの関係を検討した。

方 法

EPDSと日本語版POMS-2を用いて,母親の産後の心理状態を測定した。尿中カテコールアミンとセロトニンをストレス反応とうつ病の指標として測定した。背景因子は,年齢,分娩経験,分娩方法,支援状況,授乳状況であった。産後1ヶ月検診時に94人の女性からデータを収集した。

結 果

尿中ノルアドレナリン値の高さは,EPDSスコアと関連していた。また,夫のサポート不足は,POMS-2の総合的気分状態【TMD】,混乱-当惑【CB】,抑うつ-不安【DD】スコアの上昇と関連していた。さらに,初産婦はPOMS-2の緊張-不安【TA】スコアが高く,混合栄養や人工栄養の母親は混乱-当惑【CB】スコアが高かった。

結 論

これらの結果は,尿中ノルアドレナリンが産後の母親のうつ病を反映していることを示唆している。さらに,夫のサポート,初産婦,授乳状況についての背景因子も母親の心理状態に関係することが明らかとなった。

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