日本助産学会誌
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原著
高年初産婦の産後1か月における育児困難感に影響する要因間の関連
渡邊 美紀名取 初美平田 良江渡邊 由香
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2022 年 36 巻 1 号 p. 29-40

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抄録

目 的

高年初産婦の産後1か月における育児困難感に影響する要因間の関連を明らかにすること。

対象と方法

対象は,A県の7病院と6産科診療所で出産し,産後1か月健康診査に来院した日本人の高年初産婦。調査は属性と「子育てレジリエンス尺度」,「育児ストレス尺度短縮版」,「母親役割の自信尺度」,「母親であることの満足感尺度」,子ども総研式・育児支援質問紙のうちの「育児の印象」の5つの尺度,「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」と「夜間睡眠の充足感」で構成された自記式調査用紙を用いて行われた。属性,各尺度の基本統計量の算出を行い,就労,サポートの有無別の育児困難感の得点を比較した。また各変数間の関係性について共分散構造分析をおこなった。

結 果

高年初産婦294人から回答があり,そのうちの有効回答252部(有効回答率85.7%)を分析した。平均年齢37.8歳(±2.4歳),最高年齢46歳であった。育児困難感の平均得点は18.1±4.6で,就労者の得点が高かった(p=.009)。サポートの有無による差はなかった。高年初産婦の育児困難感に直接影響していた要因は,母親役割の自信(−0.54)と育児ストレス(0.36)であった。子育てレジリエンスの上昇は,蓄積疲労(−0.33),育児ストレスの減少(−0.41),母親であることの満足感(0.31),母親役割の自信の向上(0.30)を介して,育児困難感を減少させた。さらに,子育てレジリエンスの上昇は夜間睡眠の充足感(0.31)を高め,蓄積疲労を減少させる(−.39)効果が認められた。

結 論

「母親役割の自信」と「育児ストレス」は,高年初産婦の育児困難感に直接影響していた。子育てレジリエンスは育児困難感に直接影響してはいなかったが,身体的状況である「蓄積疲労」,心理的状況である「夜間睡眠の充足感」「育児ストレス」「母親であることの満足感」「母親役割の自信」を経由して育児困難感を低下させていた。したがって,子育てレジリエンスは,すべての要因を経由して育児困難感に影響を与えている重要な要因として位置づけられる。

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