2022 年 36 巻 1 号 p. 53-65
目 的
妊娠後期および産褥早期における下部尿路症状と膀胱内尿量の実態を明らかにし,産褥早期の下部尿路機能の特徴を探ることを目的とする。
対象と方法
経腟分娩予定の単胎妊娠の女性を対象に,妊娠後期から産褥早期(産褥1~5日)に前方視的観察研究を行った。妊娠後期には,CLSSとICIQ-SFを用いた自記式質問紙調査と残尿量の測定を行った。産褥早期には,各日1回,排尿前に自覚的尿意と膀胱内尿量を,排尿後に残尿量と排尿困難および残尿感,尿失禁の有無を調査した。膀胱内尿量および残尿量の測定には携帯型超音波診断装置を用い,産褥早期の尿意減弱の有無は膀胱内尿量と自覚的尿意の比較により分類した。なお,本研究は富山県立大学の「人を対象とする研究」倫理審査部会の承認を得て実施した。
結 果
計23名を分析対象とした。妊娠後期の下部尿路症状の有症率は昼間頻尿および夜間頻尿が87.0%と最も高く,次いで尿失禁,尿意切迫感の順に高かった。ICIQ-SFスコアは平均5.0±3.9点であった。
産褥早期の排尿前の平均膀胱内尿量は375.8~447.7mlであった。産褥4日が447.7±193.5mlと多い傾向にあり,47.6%の対象が500ml以上であった。下部尿路症状の有症率は尿意減弱が最も高く,産褥1日52.9%,産褥3日36.4%と減少傾向を示したが,産褥4日に42.9%と増加傾向となった。産褥日数と下部尿路症状の間に関連はなかった。ロジスティック回帰分析の結果,産褥4日の尿意減弱は妊娠後期のICIQ-SFスコアが高いほど生じていた(p=0.046,オッズ比1.35)。
結 論
産褥早期は,尿量が多くなる一方で尿意の知覚は産褥日数に限らず低下している可能性があり,膀胱が充満しやすい特徴がある。産褥4日の尿意減弱の有無には妊娠後期のICIQ-SFスコアが関連していた。