日本助産学会誌
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死産に対する看護者の感情―グリーフケアツールの活用―
吉野 めぐみ中島 久美子
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2023 年 37 巻 2 号 p. 206-215

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抄録

目 的

看護者は,死産を経験した夫婦に寄り添い,夫婦の思いや死産の看護を共有し,継続した看護を行うことが必要である。本研究の目的は,死産を経験した夫婦に対する看護者の思いや死産の看護について妊娠期から産褥期の各期に記入できるグリーフケアツールを試作し,ツールを使用して死産の看護を想起することによる看護者の死産に対する感情を明らかにすることである。

対象と方法

研究デザインは質的記述的研究である。対象者は妊娠12週以降の自然死産または人工死産の看護を経験した看護者13名(助産師・看護師)である。試作したツールに最も印象に残る死産の看護1症例について記入し,看護者の死産に対する感情について半構成的面接により得られたデータを質的帰納的に分析した。

結 果

死産に対する看護者の感情は4カテゴリーに集約された。【死産の看護に対する使命感】は,死産を経験した夫婦への関わりに対する誠実心や看護者としての責任感であり,一方【夫婦や死児への看護に対する困惑】では,死産の夫婦に関わることの難しさ,死産の看護への不安の感情であった。また【死産の看護に対する探究心】は,死産の看護を振り返り,夫婦にとってより良い死産の看護の探求,死産の看護について学びを深めたい感情や【チーム医療への期待感】は,夫婦に対しチームとして関わり,看護者間でサポートしたい感情であった。

結 論

死産に関わる看護者は,夫婦や死児への看護に対する困惑を抱く一方,死産の看護に対する使命感を抱いていた。また,死産の看護の経験を振り返り,より良い死産の看護を模索していた。死産の看護をツールに記入することは,看護者が死産の関わりがあった各時期の夫婦や死児に対する思いを再認識し,看護者が実施した看護や看護者自身の感情を振り返る機会となること,また死産の看護への探究につながることが示唆された。

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