日本助産学会誌
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37 巻, 2 号
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巻頭言
総説
  • 園田 希, 巌 千晶, 髙畑 香織, 田所 由利子
    2023 年 37 巻 2 号 p. 87-99
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    [早期公開] 公開日: 2023/05/23
    ジャーナル フリー

    目 的

    「妊娠出産される女性とご家族のための助産ガイドライン」の評価のため,患者向け教育資料を体系的に評価できる最新の評価指標と使用尺度を明らかにする。

    対象と方法

    医学中央雑誌WebとPubMedで文献を検索した。タイトル,抄録,本文を参考に,患者向け教育資料の評価に関する文献を抽出した。文献は,患者向け教育資料の種類,評価者,評価ドメイン,評価項目について整理した。

    結 果

    12文献が抽出された。3文献が視聴覚教育資料,10文献がテキストベースの教育資料の評価であった。1文献は,視聴覚教育資料,テキストベースの教育資料の評価の双方が行われていた。患者向け教育資料の評価は,教育資料の種類により,評価ドメイン,評価に使用した尺度が異なっていた。テキストベースの患者向け教育資料の評価には,readabilityの評価として,Flesch Reading Ease,Flesch-Kincaid,Simple Measure of Gobbledygook(SMOG)などが,その他のドメインの評価にはDISCERN Assessment,LIDA Score,Patient Education Materials Assessment Tool(PEMAT-P),Visual Aesthetics of Website Inventory(VisAWI)が使用されていた。いずれの文献でも2名の評価者で評価が行われていた。テキストベースの教育資料の評価では,readabilityの評価に加え,患者向け教育資料の目的に応じた評価尺度を用いて,複数のドメインから評価する必要があることが分かった。

    結 論

    「妊娠出産される女性とご家族のための助産ガイドライン」の評価に向けて,readabilityの評価尺度,理解しやすさ,行動しやすさを評価することができるPEMAT日本版の使用を検討する。

  • 鈴木 瞳, 濵田 ひとみ, 大田 えりか
    2023 年 37 巻 2 号 p. 100-113
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    [早期公開] 公開日: 2023/06/03
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,思春期女性を対象とし,自身の月経にまつわる体験を通した心理・社会的課題に関する質的研究に焦点を当て,複数の国における文献のスコーピングレビューを行い,思春期の女性の初経・月経の体験の語りや言葉から抽出される潜在的な月経対処の心理・社会的課題を概観して整理し,明らかにすることである。

    対象と方法

    思春期女性を対象とし,月経に関する課題についての質的研究を,PubMed,医学中央雑誌WEB版(医中誌)を用い,2000年以降に出版された文献に限定し,2021年11月に検索を行った。採択された文献内で導き出された,カテゴリーやテーマとその生データを抽出し,各文献の解釈と生データを再度比較検討し,カテゴリー化を行なった(登録番号:UMIN000048385)。

    結 果

    再カテゴリー化した結果,4つのカテゴリーと14のサブカテゴリーに分類された。【個人レベルの課題】として,[身体的な変化による影響],[心理的な変化による影響],[月経に関する情報・教育へのアクセス],[月経に関する知識と認識]のサブカテゴリーが,【社会レベルの課題】では,[社会的偏見],[羞恥心],[タブーとされる月経],[社会生活の制限],[宗教的課題],[月経経験者の他者との交流]のサブカテゴリーが生成された。【家族レベルの課題】では,[母親との関係],[母親を含む家族・保護者との関係]のサブカテゴリーが,【物理的な課題】では,[生活基盤の脆弱さ],[プライバシーの欠如]のサブカテゴリーが生成された。

    結 論

    本研究の結果は,思春期女性の月経体験や月経の健康向上ために考慮すべき要素を理解するために役立つと考えられる。また,すべての女性に対して,正確な情報へのアクセスや適切な月経管理,月経を肯定的に捉えられるような心理的な支援,物理的なアクセスの確保の必要性が示唆された。

原著
  • 生駒 妙香
    2023 年 37 巻 2 号 p. 114-125
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    [早期公開] 公開日: 2023/04/26
    ジャーナル フリー

    目 的

    臨床助産師による特定妊婦との関わりの実践は具体的にはいかなるものか,その背景の構造を明らかにし現象学的に記述することである。

    対象と方法

    研究デザインは現象学的研究である。研究協力者は,臨床経験が10年以上ある助産師で,特定妊婦との関わりが複数回あり,その実践を語ることができることを条件にネットワーク標本抽出法にて抽出した。データ収集は非構造化インタビュー法を用いて実施した。

    結 果

    研究協力者は30歳代後半の助産師Aさん,病院に勤務して10数年になる。Aさんの語りの構成は,3つのテーマから成り立っていた。【「人をみる」ことへの問い】,「人をみる」ことへの問いの着地点として語られた【母子とその周りもみる】という実践,母子とその周りもみることでみえてきた【「踏み込んで」関わり,地域に「パスする」】という地域連携における実践であった。【母子とその周りもみる】は,次の4つから構成されていた。〔母子とその周りを「いろんな方面から」みる〕,〔妊娠を起点に母親の過去と未来をみる〕,〔「みてもらえてる」と母親が思えるように,母親の話を聞く〕,〔困難を抱える母親の変化を〈強み〉としてみる〕である。地域連携では,〔「踏み込んで」関わる〕,〔地域に「パスする」〕という2つから構成されていた。

    結 論

    臨床助産師による特定妊婦との関わりの実践では,「人をみること」への問いから,「母子とその周りもみる」という実践と,地域連携における実践の構造が明らかになった。その実践では,助産師の価値観がケアに直結するのではなく,「母子とその周りもみる」ことでケアが決定されていくことが示唆された。また臨床助産師による特定妊婦との関係構築に向けた関わり,特定妊婦が地域社会とつながるための実践が示された。

  • 頃安 玲穂, 田淵 紀子, 毎田 佳子, 南 香奈
    2023 年 37 巻 2 号 p. 126-138
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    [早期公開] 公開日: 2023/07/27
    ジャーナル フリー

    目 的

    育児相談など産後の母子支援の場面で,地域で働く熟練助産師が児童虐待や虐待リスクが高くなっている状況を発見する際の視点を明らかにする。

    対象と方法

    助産師経験年数10年以上で,助産院に就業しており,児童虐待事例,又は発生リスクが高くなっている親子への支援を行った経験がある助産師を対象とした。インタビューガイドを用いて半構造化インタビューを実施し,得られたデータを逐語録に起こし,その内容をKrippendorffの内容分析の手法を参考に質的に分析した。

    結 果

    研究参加者は4名であった。地域で働く熟練助産師が児童虐待を発見する際の視点は90のコード,37のサブカテゴリー,8のカテゴリーに集約された。地域で働く熟練助産師は,【自宅の環境に映し出されるもの】,【母親の心身の状態に現れる苦悩】,【援助希求能力の乏しさ】,【子どもへの愛着のもち難さ】,【子どもの状態と育て方の不一致】,【子どもへの行動化】,【子どもの危機的な状態】,【家族関係の不協和】の8の視点を持っていた。

    結 論

    地域で働く熟練助産師は,自宅の環境,母親や子どもの様子,家族の態度という多角的な視点を持っていたことが明らかになった。これらの視点は,母親の立場に立って,全人的な視点で援助関係を構築することによって初めて見えてくるものであった。そして母性擁護の立場からの援助関係を基盤として,支援を継続し続けていることが地域で働く熟練助産師の児童虐待発見とケアの視点であった。

  • 森山 希, 片岡 弥恵子
    2023 年 37 巻 2 号 p. 139-150
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    [早期公開] 公開日: 2023/08/05
    ジャーナル フリー

    目 的

    育児において経産婦は,初産婦とは異なる困難性を抱えているといえるが,十分な支援環境が整っているとは言い難い。経産婦への支援の方向性を検討するため,助産師が捉えた異年齢の2人を育児する経産婦のもつ育児に関する困難性を明らかにすることを本研究の目的とする。

    対象と方法

    産後の経産婦への対応を5年以上経験している助産師9名を対象に,これまでの関わりを通して捉えた異年齢の2人の育児をする経産婦のもつ育児に関する困難性について半構成的面接法を用いてデータ収集をし,質的記述的分析を行った。

    結 果

    助産師が捉えた異年齢の2人を育児する経産婦のもつ育児に関する困難性として,6カテゴリー,13サブカテゴリ―が抽出された。経産婦には,第2子の育児において,第1子の【育児経験を全ては適応できない】状況があった。2人の子どもを育てることが初めての経産婦は,【2人を並行して育児する知識とスキル不足】があり,さらに第1子の育児経験を通して得られた【子育て観の再構築の難しさ】が存在していた。これらにより母親には【育児負担の増加】が発生,【2人の育児による疲労の蓄積】に繋がっていた。さらに,【経産婦ゆえのサポートの得にくさ】により産前産後の解決への対処行動に繋がりにくいことが明らかになった。

    結 論

    経産婦特有の育児に関する困難性が明らかになった。専門職はこの困難性を理解した上で,経産婦への支援を検討する必要がある。

  • 和田 秋花, 岡山 久代
    2023 年 37 巻 2 号 p. 151-161
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    ジャーナル フリー

    目 的

    熟練助産師と初学者の会陰保護時の会陰にかかる圧力値・せん断力値とその経時的変化を比較し,手技の違いと特徴を分析する。

    方 法

    教員及びアドバンス助産師10名(熟練助産師),助産学生及び新人助産師10名(初学者)を対象とした。滅菌手袋の上から右手の手掌中央に力覚センサを装着し,鶏卵大に発露している状態から3回の陣痛周期で児頭娩出される分娩シミュレーションでの,会陰保護実施中のファントムの会陰部にかかる圧力値・せん断力値を測定した。得られた圧力値のデータをグラフ化しパターン分類を行い,熟練助産師と初学者による比較を行った。各陣痛周期の最大圧力値の差は一元配置分散分析,最大圧力値の2群間の比較はStudentのt検定を行った。また,圧力の方向を視覚的に捉えるため,各タイミングのせん断力値の相対座標をベクトルとして表示し分析した。

    結 果

    得られた圧力値のデータをグラフ化したところ,熟練助産師は全員間欠期と収縮期で圧力値に差が出るパターンであったのに対し,初学者では10人中4人が常に一定の圧力値で推移しているパターンが見られた。熟練助産師の各陣痛周期の最大圧力値を比較するため,一元配置分散分析を行った。その結果,熟練助産師の最大圧力値は陣痛周期1,2では同程度であり,陣痛周期3では陣痛周期1,2と比較して有意に高いことが分かった。初学者でも同様の分析を行った結果,陣痛周期3では陣痛周期2に比べて高いものの,陣痛周期1と陣痛周期2,3は同程度であることが示された。熟練助産師と初学者の陣痛周期ごとの最大圧力値の比較を行うためStudentのt検定を行った結果,熟練助産師は陣痛周期1,2において初学者よりも最大圧力値が低いが,陣痛周期3では同程度に圧力をかけていることが示された。陣痛周期3のせん断力について,後頭結節滑脱時,児の鼻が娩出し始める時点,圧力値が最大となった時点での分析を行った結果,どの場面においても熟練助産師は初学者と比べて産婦の前方(恥骨方向)へとせん断力がかかっている傾向にあることが視覚的に示された。

    結 論

    熟練助産師と初学者の会陰保護時の会陰にかかる圧力値・せん断力値とその変化に違いがあることが明らかとなり,初学者には圧力をかける必要のあるタイミングとその強さ,また圧迫の方向について一連の分娩介助を通して経時的に指導する必要があることが示唆された。

  • 山下 恵
    2023 年 37 巻 2 号 p. 162-172
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    ジャーナル フリー

    目 的

    背部温罨法が非妊娠・非授乳期女性のストレスと乳房血流に及ぼす影響を明らかにする。

    対象と方法

    対象は20~41歳の非妊娠・非授乳期で月経周期が卵胞期の女性21名(23.6 ± 5.3歳)。同一被験者に背部温罨法(以下,温罨法群)と仰臥位安静(以下,安静群)を別日の同一時間帯に実施し2群間を比較した。実験の流れは,介入前安静・介入(背部温罨法または仰臥位安静)・介入後安静を各15分間とした。ストレスは,唾液検体からコルチゾールとヒトヘルペスウイルス6型・7型(以下,HHV6・HHV7)および1:不快から9:快までの9段階リッカート尺度(以下,快-不快)を用い,介入前後と実験終了時に検体採取等を行い評価した。乳房血流は,レーザードップラー血流計を用いて実験中連続測定し5分毎の平均値を求め評価した。

    結果・考察

    ストレスは,コルチゾールとHHV6・HHV7では2群間に有意差を認めなかったが,快-不快では温罨法群が安静群よりも有意に快であった(p < .01)。背部温罨法が対象を快の状態に導くことは示されたが,ストレスに及ぼす影響を明らかにするには至らなかった。乳房血流では介入方法と時間の交互作用を認めた。時間の単純主効果が有意であったため多重比較を行ったところ,介入前の基準値に対し,温罨法群は介入後すべての時点で有意差を認め(順にp < .05,p < .01,p < .05),安静群は介入中5~10分と介入後すべての時点で(すべてp < .01)有意差を認めた。両群ともに介入後の乳房血流の変化が大きかったが2群間に有意差はなかった。背部温罨法は,実施中には乳房血流増加への影響はわずかであるが,実施後の乳房血流を促進することが示唆された。しかし,仰臥位安静のみでも介入後の乳房血流を促進する可能性が残された。

    結 論

    背部温罨法は仰臥位安静と比較して,対象をより快の状態に導くことが示された。また,温罨法中の乳房血流に影響を及ぼすことなく,実施後の乳房血流を促進することが示唆された。

資料
  • 増田 恵美, 片岡 弥恵子
    2023 年 37 巻 2 号 p. 173-184
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    [早期公開] 公開日: 2023/08/05
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,第一に,腰痛や骨盤痛のある妊婦を対象にオンラインを活用したヨガプログラムを開発し,プロトタイプの実行可能性を評価することである。第二に,ヨガプログラムのアウトカム(腰痛や骨盤痛の部位や程度,日常生活障害度,抑うつ症状)の変化を明らかにすることである。

    対象と方法

    腰痛や骨盤痛のある妊婦で,妊娠期の異常や合併症のない者を対象とした。ヨガプログラムは,8週間で,毎日のヨガ実施,痛みの記録の記載,ヨガセッションで構成した。実行可能性の評価は,実用性(安全性・負担感),受容性,継続性について,Web質問票とヨガセッションでの意見をデータとした。また,ヨガプログラム開始前,参加中,終了時の腰痛や骨盤痛の部位や程度,日常生活障害度,抑うつの変化を測定し,3時点の推移を比較した。聖路加国際大学研究倫理審査の承認を得た(21-AC094)。

    結 果

    参加者は5名で,1名が途中中断した。実行可能性の評価の安全性は,ヨガプログラム中の異常な腹緊,気分不快,転倒はなかった。負担感は,概ね「軽い」とされたが,記録の記載は個人差があった。受容性は,教材については概ね高く,継続性は,教材を使用しながら毎日ヨガを行い,4名は最後まで取り組むことができた。3時点での腰痛自覚は,開始前5名中5名,終了時2名であった。骨盤痛自覚は,開始前4名中3名,終了時1名であった。痛みの程度は,開始前平均40(SD16.7),参加中32(SD29.5)と減少し,終了時32(SD29.5)であった。オズウェストリー腰痛障害質問票の平均は,開始前22%,参加中20%,終了時14%と減少した。エジンバラ産後うつ病質問票の平均は,開始前6点,参加中3点,終了時4点と減少した。

    結 論

    開発したヨガプログラムは,実行可能性があり,腰痛・骨盤痛の軽減の可能性が考えられる。今後は,対象数の拡大やヨガプログラム開始時期を再検討すること,対象施設や対象者数を増加させるための改善が必要である。

  • 中西 真美子, 青木 久恵, 窪田 惠子, 庄山 茂子, 小松 美和子
    2023 年 37 巻 2 号 p. 185-193
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    [早期公開] 公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    目 的

    産褥入院中の褥婦が着用する授乳服において,助産師が乳房ケアをしやすい授乳服の要素を明らかにする。

    対象と方法

    福岡県内の5施設の助産師130名を対象に,自記式質問紙を配布し,78名より回答を得た(回収率60%)。10種の授乳服より,助産師が乳房ケアしやすい・しにくい授乳服,乳房ケアした褥婦が着用していた授乳服,職場で採用されている授乳服の選択を求めた。また,入院中の褥婦が着用する授乳服で重視する要素10項目,及び10種の授乳服における乳房ケア時の「乳房の出しやすさ」の印象について4段階で回答を求めた。

    結 果

    助産師が乳房ケアしやすいと回答した授乳服は,ネグリジェ(全前開き),パジャマ(全前開き),パジャマ(浴衣式)の3種であった。乳房ケアしにくい授乳服は,ネグリジェ(前開きなし),パジャマ(前開きなし),ネグリジェ(上部前開き),ネグリジェ(授乳口あり)の4種で,約87%の助産師はこれらを着用した褥婦の乳房ケア経験があった。入院中の褥婦が着用する授乳服において,助産師が重視する要素は,「乳房の出しやすさ」と「着心地」であった。約65%の助産師は乳房ケア時に授乳口を必要とし,そのうちの約92%は20cm四方以上の大きさを求めていた。

    結 論

    助産師が乳房ケアしやすい授乳服は,ネグリジェ(全前開き),パジャマ(全前開き),パジャマ(浴衣式)の3種であった。約87%の助産師は,乳房ケアしにくい授乳服を着用した褥婦の乳房ケア経験があることから,授乳服のデザインによっては,助産師が乳房ケアしにくい実態が明らかになった。また,乳房ケア時に授乳口を必要とする助産師は約65%で,その約92%が20cm四方以上の大きさを選択し,乳房の出しやすさへの要求が高いことから,助産師は大きな授乳口の授乳服を求めていることが明らかとなった。

  • 菊川 佳世, 古山 美穂, 渡邊 香織
    2023 年 37 巻 2 号 p. 194-205
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    [早期公開] 公開日: 2023/07/27
    ジャーナル フリー

    目 的

    つわりに対する情報提供を主とした看護支援の効果を明らかにする。

    方 法

    5つのデータベースを網羅的に検索し,抄録からPICOを満たす実験研究または準実験研究を抽出した。本文を精査し,最終的に文献を採択した。論文の質はCochraneのRisk of Bias ver.2にて著者らが個別に査定し,異なる見解となった項目は討議し評価を統一した。

    結 果

    計6件の論文を採択した。つわりの自覚症状は,Index of Nausea, Vomiting, and Retching,The Motherisk Pregnancy-Unique Quantification of Emesis and Nausea,Visual Analogue Scaleで計測され,妊婦のQuality of LifeはHealth-Related Quality of Life for Nausea and Vomiting during Pregnancyで計測された。加えてつわりの持続日数を追跡した論文があった。介入方法は,電話訪問,面談と電話訪問の組み合わせ,集団への講義,講義と意見交換の組み合わせがあった。ベースライン調査の後,介入2週後や4週後での調査や,毎週の追跡が行われた。つわりに対する情報提供を主とした看護支援は,つわりの苦痛軽減に一定の効果が期待できる可能性があるが,質評価は“High risk of bias”もしくは“Some concerns”という結果であった。

    結 論

    つわりへの看護支援の効果を検証する研究では,ランダム化比較試験の実施や事前のプロトコル公開,つわりの自覚症状を計測する尺度の統一やアウトカム指標を単一のものに限定すること,つわりの生理的変化を考慮した介入の時期やフォローアップの間隔を検討し,バイアスのリスクを軽減させ結果の信頼性を高める必要がある。

  • 吉野 めぐみ, 中島 久美子
    2023 年 37 巻 2 号 p. 206-215
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    [早期公開] 公開日: 2023/08/05
    ジャーナル フリー

    目 的

    看護者は,死産を経験した夫婦に寄り添い,夫婦の思いや死産の看護を共有し,継続した看護を行うことが必要である。本研究の目的は,死産を経験した夫婦に対する看護者の思いや死産の看護について妊娠期から産褥期の各期に記入できるグリーフケアツールを試作し,ツールを使用して死産の看護を想起することによる看護者の死産に対する感情を明らかにすることである。

    対象と方法

    研究デザインは質的記述的研究である。対象者は妊娠12週以降の自然死産または人工死産の看護を経験した看護者13名(助産師・看護師)である。試作したツールに最も印象に残る死産の看護1症例について記入し,看護者の死産に対する感情について半構成的面接により得られたデータを質的帰納的に分析した。

    結 果

    死産に対する看護者の感情は4カテゴリーに集約された。【死産の看護に対する使命感】は,死産を経験した夫婦への関わりに対する誠実心や看護者としての責任感であり,一方【夫婦や死児への看護に対する困惑】では,死産の夫婦に関わることの難しさ,死産の看護への不安の感情であった。また【死産の看護に対する探究心】は,死産の看護を振り返り,夫婦にとってより良い死産の看護の探求,死産の看護について学びを深めたい感情や【チーム医療への期待感】は,夫婦に対しチームとして関わり,看護者間でサポートしたい感情であった。

    結 論

    死産に関わる看護者は,夫婦や死児への看護に対する困惑を抱く一方,死産の看護に対する使命感を抱いていた。また,死産の看護の経験を振り返り,より良い死産の看護を模索していた。死産の看護をツールに記入することは,看護者が死産の関わりがあった各時期の夫婦や死児に対する思いを再認識し,看護者が実施した看護や看護者自身の感情を振り返る機会となること,また死産の看護への探究につながることが示唆された。

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