2025 年 39 巻 1 号 p. 3-14
目 的
近年のExcessive Crying(EC)に関する研究結果から,ECに関連する要因とECが母子に及ぼす影響を明らかにし,今後必要な研究の示唆を得る。
対象と方法
2013–2023年に発表され日本語もしくは英語で書かれた文献を対象とした。PubMedでは「(Excessive Crying OR Infant Colic)AND related factor」で検索し,医中誌では日本語にECに該当するキーワードがないことから,乳児の泣きに関連するキーワードで検索をした。分析対象となった文献は17件であり,文献より,ECに関連する要因とECが母親と児それぞれに及ぼす影響を抽出した。
結 果
ECの定義と測定方法は文献によって違いが見られた。日本で実施された研究はなかった。ECに関連する要因として,ECのリスクを上げるものには,妊娠前から妊娠中にかけての母親の不安障害,周産期のgender-based household maltreatment,早産,乳児の気難しさ,新生児期の抗生剤の使用などが報告されていた。反対にECのリスクを下げるものには,妊娠期から産後にかけての社会的サポートや人間関係の幸福度が高いこと,育児へのパートナーの関与が高いことが報告されていた。また,ECが母子に及ぼす影響として,母親の不安や産後うつ,育児ストレスの上昇が報告されていた。乳児期にECがあった児は,幼児期にも行動や気分に問題を抱えるリスクが高いことが報告されていた。
結 論
ECに関連する要因やECが母子に及ぼす影響と考えられるものが明らかとなった。今後はECの有無に有意差があった要因について,因果関係を調査すること,抑うつや不安とECの関係についてどちらが原因であるかを明らかにすることが必要である。また日本でのECの実態を調査し,日本の実態に沿った介入を検討することが必要である。