日本助産学会誌
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原著
助産師の児頭後頭結節滑脱の判断
音村 有美村上 明美浅見 恵梨子島谷 康司島 圭介藤井 宏子
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2025 年 39 巻 1 号 p. 15-26

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抄録

目 的

児頭後頭結節滑脱の助産師の判断指標を明らかにし,実践的には児頭後頭結節滑脱に関する教育に,学術的には助産師の技能に貢献することを目的とした。

対象と方法

対象はアドバンス助産師またはそれに準ずる経験年数かつ分娩介助件数を有する助産師14名とし,機縁法で研究協力の依頼をした。研究対象者に2つのシミュレーターを用いて分娩介助を実施してもらい,児頭後頭結節滑脱の再現性が高い方を選定してもらった。その後半構造化面接法を用いて選定理由と児頭後頭結節滑脱の判断指標を,同意を得てICレコーダーに録音しながら聞き取った。その後逐語録を作成し,児頭後頭結節滑脱の判断指標に関する内容を抽出,意味内容の類似性に従いカテゴリ化した。本研究は,岡山大学医療系部局臨床研究審査専門委員会の承諾を得て実施した。

結 果

対象者全員が,再現性が高い方はthe Sophie and Sophie's Mum Birth Simulator 4.0.(MODEL-med®)と回答した。児頭後頭結節滑脱の判断指標に関する逐語録を娩出時期にも留意し分析を行った結果,11の判断指標が抽出された。判断指標は「後頭結節滑脱前」「後頭結節滑脱時」「後頭結節滑脱後」に分類され,後頭結節滑脱前は【児頭の丸みを感じる】【強い児の反屈圧を触知する】【会陰は後頭結節滑脱まで伸展できる余裕がある】,後頭結節滑脱時は【児頭を介助者の手掌全体で把持可能になる】【介助者の手指関節に児頭の形状や児の娩出圧の変化を感じる】【児の額が確認できる】【介助者の加圧と児の反屈圧の均衡が変化する】【会陰の変化は限界に近づく】,後頭結節滑脱後は【児頭の丸みは触知不能になる】【児頭娩出方向が水平から垂直に変わる】【会陰が復古する】が該当した。

結 論

児頭後頭結節滑脱の判断指標として11のカテゴリが抽出され,児頭後頭結節滑脱の機序に沿って分類した結果,児頭後頭結節滑脱前から滑脱後にかけての判断指標が示された。

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