植物研究雑誌
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中央アジア崑崙・カラコルム産植物の分類学的研究, 3. アブラナ科
大場秀章I. A. アルシェーバズ武素功
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1998 年 73 巻 6 号 p. 325-331

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抄録

著者は,崑崙とその西側に連なるカラコルム山脈北側で1987年から1989年にかけて行われた中国科学院による総合科学考察で採集したアブラナ科標本を同定した.この地域のアブラナ科植物の情報はほとんど皆無であったので,本報告が最初のアブラナ科植物相の記録となる.同定の結果,32種のアブラナ科植物が産することが判明したが,ヒマラヤから横断山脈,チベット,中央アジアにおいて高い種多様性をもつアブラナ科としては,種多様性は低い.調査が不十分であることは考慮せねばならないが,このことには,乾燥などの環境要因の影響により高茎草原のようなアブラナ科植物の種多様性が高い立地が欠如していることが反映しているものと考えられる.32種中,Erysimum handel-mazzetti A. Polatsckek は新彊とチベット,Pegaeophyton scapiflorum (Hook. f. & Thomson)C. Marquand & Airy-Shaw およびBraya oxycarpa Hook. f. & Thomson は新彊,Lepidium alashanicum H. L. Yang は青海省に今回新たに見出された種である.また,従来中国からSterigmostemum tometosum (Wild.)M.-Bieb.として報告されてきた植物はOreoloma eglandulosum Botschantsev の誤同定であることが判明した.

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© 1998 植物研究雑誌編集委員会
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