抄録
近年、南アジア地域においても広く実施されているコミュニティ・ベースの環境保全政策の研究においては、コミュニティを基盤とすることで起こる権力の再生産や、その結果としての資源の不平等な分配が問題として指摘されてきた。その一方で、地方への権限委譲を伴うこの政策を通して、地域社会に新たな政治実践が展開していることも指摘されている。
本研究では、バングラデシュにおける環境保全政策の実践を通して展開する村落社会における政治実践の動態的プロセスに注目し、議論される問題、あるいは争われる資源によって資源管理の参加者たちの対立軸や連携の在り方が変わっていくプロセスを描き出した。そうすることで、政策実践やその研究分析において社会的カテゴリーをアプリオリに設定することの問題、あるいはそれによって覆い隠される多様な政治実践の在り方を看過してしまうことを示唆した。