抄録
本稿は、新国際分業論を援用しながら、金融危機後の日系縫製企業によるバングラデシュへの移転実態をジェンダーの視点から分析する。主要課題は、(1)金融危機以降の日系縫製企業のバングラデシュ移転の実態とその要因について考察すること、(2)第二次移転先であるバングラデシュ工場の特徴について、日系縫製工場の企業組織、生産・労働過程をジェンダーの視点から分析し、明らかにすることである。バングラデシュ工場の企業組織は、ジェンダー分離的、非対称の特徴を有しており、人事権、査定権は、男性生産幹部にゆだねられる。1枚の低価格帯ショートパンツに必要な66の縫製工程の労働過程を明らかにすれば、縫製工場での勤務年数、熟練度、査定との間には、合理的な説明がつかない矛盾を抱えている。他の周辺アジア諸国との競争が激化する中、バングラデシュの縫製産業にとって、ジェンダーに敏感な企業組織に基づく女性工員の熟練形成が鍵を握っている。