本稿は、アッサム州で進行しつつある農業の変容について、在来ヒンドゥー教徒村落でみられる耕地利用の転換を切り口にして、その一端を明らかにするものである。調査村では、生産性の低迷、配給米の支給、不安定な天候、労働力の不足などが原因となり、稲作以外の用途に転換される耕地が出現している。稲作が行なわれなくなった耕地は、その大きさや立地環境によって林地か養魚池のいずれかの用途として利用されるが、造成コストがほとんどかからず、すぐに現金収入が見込める養魚池への転換を選択する村人が多くなっている。ヒンドゥー教徒の村人が直接魚を捕獲して販売することは宗教的な理由から忌避されるため、養殖魚の販売ビジネスは周辺村落に居住するムスリムが担っている。草の根レベルでヒンドゥーとムスリムが互いに協力し合うことで、農業の多様化が進行しており、両コミュニティの関係について、経済的な側面から見ると、従来考えられてきたものとは異なる関係性がみられる。