日本外傷学会雑誌
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日本外傷学会将来計画委員会報告:J-OCTET
血漿/赤血球比≧1の輸血療法による早期に輸血を要する重症外傷に対する臨床的効果 : 多施設共同後向きコホート研究
久志本 成樹工藤 大介早川 峰司萩原 章嘉齋藤 大蔵佐々木 淳一小倉 裕司松岡 哲也植嶋 利文森村 尚登石倉 宏恭武田 宗和金子 直之加藤 宏大友 康裕横田 裕行坂本 照夫田中 裕白石 淳金村 剛宗渋沢 崇行萩原 靖古郡 慎太郎仲村 佳彦前川 邦彦村田 希吉真山 剛矢口 有乃金 史英高須 修西山 和孝
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2016 年 30 巻 3 号 p. 376-384

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抄録

 目的 : 大量出血を伴う外傷治療には早期の輸血戦略が重要である. 重症外傷における6時間以内輸血施行例の早期抽出と, 転帰改善につながる治療戦略を明らかにすることを目的とした. 方法 : Japanese Observational Study for Coagulation and Thrombolysis in Early Trauma, J–OCTETデータベースにより, 6時間以内輸血の有無による比較, 6時間以内輸血施行生存例と死亡例の比較を行った. 結果 : 6時間以内輸血施行207例中121例, 58.5%が24時間以内に10単位以上の輸血を要した. 腹部AIS≧3による予測特異度は95.4%であり, 心拍数≧90/分 and/or乳酸値≧2.5 mmol/Lの陰性的中率は90%以上であった. ロジスティク回帰分析では, 6時間以内のFFP/RBC比≧1が独立した転帰規定因子であった (オッズ比 : 0.285, P=.016). 傾向スコア逆数重み付けを用いたCox比例ハザード解析では, 6時間以内FFP/RBC比≧1が転帰に影響した (ハザード比 0.51, P<.001). 結論 : 急性期に輸血を要する重症外傷では, 6時間以内のFFP/RBC比≧1が転帰を改善する. 6時間以内輸血症例の60%は大量輸血を要し, "RBCとFFP10単位ずつ" にて開始することは転帰の改善につながる可能性がある.

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© 2016 一般社団法人 日本外傷学会
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