2016 年 30 巻 3 号 p. 376-384
目的 : 大量出血を伴う外傷治療には早期の輸血戦略が重要である. 重症外傷における6時間以内輸血施行例の早期抽出と, 転帰改善につながる治療戦略を明らかにすることを目的とした. 方法 : Japanese Observational Study for Coagulation and Thrombolysis in Early Trauma, J–OCTETデータベースにより, 6時間以内輸血の有無による比較, 6時間以内輸血施行生存例と死亡例の比較を行った. 結果 : 6時間以内輸血施行207例中121例, 58.5%が24時間以内に10単位以上の輸血を要した. 腹部AIS≧3による予測特異度は95.4%であり, 心拍数≧90/分 and/or乳酸値≧2.5 mmol/Lの陰性的中率は90%以上であった. ロジスティク回帰分析では, 6時間以内のFFP/RBC比≧1が独立した転帰規定因子であった (オッズ比 : 0.285, P=.016). 傾向スコア逆数重み付けを用いたCox比例ハザード解析では, 6時間以内FFP/RBC比≧1が転帰に影響した (ハザード比 0.51, P<.001). 結論 : 急性期に輸血を要する重症外傷では, 6時間以内のFFP/RBC比≧1が転帰を改善する. 6時間以内輸血症例の60%は大量輸血を要し, "RBCとFFP10単位ずつ" にて開始することは転帰の改善につながる可能性がある.