日本外傷学会雑誌
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日本外傷学会将来計画委員会報告:J-OCTET
初療早期より新鮮凍結血漿を積極的に投与することで重症外傷の予後を改善できるか
萩原 章嘉久志本 成樹加藤 宏佐々木 淳一小倉 裕司松岡 哲也植嶋 利文森村 尚登石倉 宏恭早川 峰司武田 宗和金子 直之齋藤 大蔵大友 康裕横田 裕行坂本 照夫田中 裕白石 淳
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2016 年 30 巻 3 号 p. 385-396

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抄録

 目的 : 救急治療室入室後の新鮮凍結血漿 (fresh frozen plasma, 以下FFP) および濃厚赤血球 (packed red blood cell, 以下RBC) の輸血量から, 患者の予後を改善させる適切なFFPとRBC輸血量の比を決定し, 早期から投与することによりの予後を改善できるかを検討することを目的とした. 方法 : Japanese Observational Study for Coagulation and Thrombolysis in Early Trauma (J–OCTET) データベースから, 24時間以内にRBC輸血を行った207例を対象とした. 退院時転帰をアウトカムとして, 6時間以内に投与したFFP/RBC比を独立変数としたROC解析からカットオフ値を算出し, FFP/RBC比により2群に群分けした. 病院転帰を主要評価項目として, propensity score (PS) による調整に基づき, 6時間以内のFFP/RBC比による2群間における生存期間の比較を行った. 結果 : 207例中201例 (97%) が鈍的外傷患者であった. ROC解析によるAUCは0.56であり, 感度・特異度曲線から最大の感度 (0.59), 特異度 (0.67) を示すFFP/RBC比は1.0であった. 患者全体をFFP/RBC比≧1.0, FFP/RBC比<1.0の2群に分け, PS matchingとinverse probability of treatment weighting (IPTW) 法により解析した. 未調整Hazard ratioは0.44, 選択したすべての項目により調整したハザード比0.32, ハザード比によるHazard ratio 0.38, IPTW法 0.41であり, 6時間以内のFFP/RBC比≧1投与例では有意に生存率が高かった. 結語 : ISS≧16かつ24時間以内に赤血球輸血を要する外傷では, 6時間以内にFFP/RBC比≧1の輸血が行われた患者の死亡ハザード比は約0.4であり, 死亡リスクは約60%減少した. 97%が鈍的外傷である患者群においても, 輸血を必要とする重症外傷患者の転帰を改善するためには, 6時間以内にFFP/RBC比≧1となる輸血を行うことが必要である.

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© 2016 一般社団法人 日本外傷学会
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