2016 年 30 巻 3 号 p. 405-411
目的 : 頭部単独外傷に対するトラネキサム酸 (以下TXA) の生命予後に対する効果を検討すること. 対象と方法 : 多重代入法を用いてJapanese Observational Study for Coagulation and Thrombolysis in Early Trauma (J–OCTET) Studyデータベースの欠測値を補完した101個のデータセットを作成した. 頭頸部AIS4以上の頭部外傷で他部位AIS1以下の230例を抽出した. 3時間以内のTXAの使用の有無を従属変数, 来院時に得られたデータを独立変数とした傾向スコアマッチングを行い, TXA使用群と非使用群間の生存期間を比較した. 結果 : TXA使用群において有意な生存期間の改善が認められた (P=0.033). サブグループ解析において, 初期D–dimer値40μg/ml以上の群においてTXA使用による生存改善が有意であった. 結語 : 頭部単独外傷において, 3時間以内のTXA投与は有意な生存期間の改善を期待できる. 最も効果が高いのは線溶亢進が生じている群と推察された.