2017 年 31 巻 4 号 p. 420-427
目的 : 当科では, 体幹部刺創に対して一定の指針に則り診療を行ってきており, 今回その妥当性につき検証した. 方法 : 2010年4月から2014年12月に搬送された50例を対象とし, 後方視的に検討した. 結果 : 男性が36例, 平均年齢は53.1歳であった. 14例が来院時ショック状態であり, 循環不安定な9例は直ちに手術を施行した. 安定を得た41例のうち, 成傷器残存などの8例はCT検査を実施せずに手術を行った. 33例でCT検査を実施し, 18例は体腔への非到達を確認したため創閉鎖とした. 体腔に達していた15例に対し, 指針に則り方針を決定した. 3例で胸腔に到達しており, 全例で胸腔ドレーンを留置し創閉鎖した. 13例で腹腔に到達しており, 10例に開腹術を行った. 全例生存退院し, 創が体腔に達していたが創閉鎖した5例は遅延手術を要さなかった. 結論 : 治療成績は良好で, 初期評価で非手術とした全例で遅延手術を要さず, 指針の妥当性が示された.