2022 年 36 巻 4 号 p. 349-352
大量腹腔内出血を伴う肝損傷でcoagulopathyやhypothermia等を伴う場合には一般的にDamage control surgery (DCS) が施行され, 他部位損傷を合併している場合は, abbreviate surgeryが行われることが多い. 本症例では肝損傷 III bに右腎動脈損傷を合併したが, すべて一期的根治術を達成できた. 症例は18歳男性, 交通外傷にて搬送された. 術前造影CTにて肝損傷 III b+右腎動脈損傷の診断となり, 緊急開腹術を施行した. 大量輸血および術中操作にて循環動態を安定化させ, 一期的に肝右葉切除および右腎動脈再建術を施行した. 大量腹腔内出血を伴う腹部外傷であっても, 詳細な術前診断が重要であり, また循環動態の安定化を維持することができれば, 長時間手術も可能であり, 一期的な根治術を行うことができる症例も存在する.