日本外傷学会雑誌
Online ISSN : 2188-0190
Print ISSN : 1340-6264
ISSN-L : 1340-6264
症例報告
肝損傷 III bおよび右腎動脈損傷に対し肝右葉切除かつ右腎動脈再建を同時に施行した1例
松田 真輝澤野 誠
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 36 巻 4 号 p. 349-352

詳細
抄録

 大量腹腔内出血を伴う肝損傷でcoagulopathyやhypothermia等を伴う場合には一般的にDamage control surgery (DCS) が施行され, 他部位損傷を合併している場合は, abbreviate surgeryが行われることが多い. 本症例では肝損傷 III bに右腎動脈損傷を合併したが, すべて一期的根治術を達成できた. 症例は18歳男性, 交通外傷にて搬送された. 術前造影CTにて肝損傷 III b+右腎動脈損傷の診断となり, 緊急開腹術を施行した. 大量輸血および術中操作にて循環動態を安定化させ, 一期的に肝右葉切除および右腎動脈再建術を施行した. 大量腹腔内出血を伴う腹部外傷であっても, 詳細な術前診断が重要であり, また循環動態の安定化を維持することができれば, 長時間手術も可能であり, 一期的な根治術を行うことができる症例も存在する.

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本外傷学会
前の記事 次の記事
feedback
Top