日本外傷学会雑誌
Online ISSN : 2188-0190
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36 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
臨床検討
  • 横田 茉莉, 中原 慎二, 三宅 康史, 坂本 哲也, 横田 順一朗
    原稿種別: 臨床検討
    2022 年 36 巻 4 号 p. 332-342
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

     【目的】腹部臓器損傷の特徴を明らかにする. 【対象・方法】2004年から2019年に日本外傷データバンクに登録され, 腹部・骨盤内臓器にAIS2以上の損傷を有する症例, 27,877例を対象に, 臓器ごとに損傷の頻度, 年齢分布, 受傷機転, 院内死亡割合, 合併損傷を記述した. 【結果】交通事故や転倒・転落・墜落などの鈍的外傷による実質臓器損傷が大半を占めた. 実質臓器損傷は若い世代の割合が高い傾向があったが, 管腔臓器損傷は高齢世代の割合が高い傾向があった. 管腔臓器損傷では実質臓器損傷に比べ, 穿通性損傷の割合が高かった. 院内死亡割合は, 結腸・直腸が最も高く, 膀胱が最も低かった. 他部位の合併損傷, 腹部臓器の合併損傷ともに近接部位・臓器の損傷が多かった. 【結語】臓器ごとに, 解剖学的特徴を反映して損傷の特徴に違いがあることが明らかとなった.

症例報告
  • 白井 邦博, 小濱 圭祐, 野間 光貴, 滿保 直美, 小林 智行, 宮脇 淳志, 平田 淳一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 4 号 p. 343-348
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

     61歳の女性. 交通事故で近医に搬送され, 腎損傷の診断にて2時間後に当院へ転院となった. 馬蹄腎峡部右側の断裂とそれによる出血性ショックに対して, transcatheter arterial embolization (TAE) で止血し得た. 経過中に生じたurinomaと損傷部周囲の膿瘍に対し経皮的ドレナージ術を施行し, 峡部断裂部の尿溢流に対し尿管カテーテルを留置した. しかし尿溢流が持続するため, 第41病日に腎部分機能廃絶目的でTAEを施行した. のちに腎瘻を造設し, 第151病日に退院した. 馬蹄腎は, 解剖学的異常による尿溢流や感染を合併しやすい. 本症例のような腎周囲膿瘍を伴う難治性尿溢流に対して, interventional radiologyは, 低侵襲で腎を温存できる有効な治療と考えられた.

  • 松田 真輝, 澤野 誠
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 4 号 p. 349-352
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

     大量腹腔内出血を伴う肝損傷でcoagulopathyやhypothermia等を伴う場合には一般的にDamage control surgery (DCS) が施行され, 他部位損傷を合併している場合は, abbreviate surgeryが行われることが多い. 本症例では肝損傷 III bに右腎動脈損傷を合併したが, すべて一期的根治術を達成できた. 症例は18歳男性, 交通外傷にて搬送された. 術前造影CTにて肝損傷 III b+右腎動脈損傷の診断となり, 緊急開腹術を施行した. 大量輸血および術中操作にて循環動態を安定化させ, 一期的に肝右葉切除および右腎動脈再建術を施行した. 大量腹腔内出血を伴う腹部外傷であっても, 詳細な術前診断が重要であり, また循環動態の安定化を維持することができれば, 長時間手術も可能であり, 一期的な根治術を行うことができる症例も存在する.

  • 松永 裕樹, 高橋 正道, 大倉 淑寛, 志水 祐介, 前原 弘武, 北川 幹太, 山川 潤, 杉山 和宏, 三上 学, 濱邊 祐一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 4 号 p. 353-358
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     外傷性腹部大動脈損傷は稀だが, 死亡率が高く, 迅速な診断・治療が肝要である. 当院はCTと透視装置を備えたハイブリッドERを有し, 移動を伴わず, 蘇生・診断・治療が可能である. ハイブリッドERで, resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (以下REBOA) で出血を制御し, ステントグラフト留置で救命した1例を経験した. 70歳代男性. ワゴン車乗車中の事故で, ショック状態で搬送された. CTで血管外漏出を伴う腹部大動脈損傷がみられた. REBOAを大腿動脈からZone3に留置し, 出血制御後, 手技中の循環安定のため, 左上腕動脈からの留置に変更した. コイリング, ステントグラフト留置で止血を得た. ハイブリッドERでのステントグラフト治療は, 移動を伴わず迅速な診断・治療が可能である.

  • 森田 恭成, 東郷 建世, 金原 佑樹, 近藤 貴士郎, 伊藤 翔平, 鈴木 秀一, 関 幸雄
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 4 号 p. 359-363
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/03
    ジャーナル フリー

     35歳男性. 左側頭部打撲・頭頸部切創・出血性ショックで来院した. 左外頸静脈・左浅側頭動脈の出血を結紮止血しショック離脱後に急性硬膜外血腫の血腫除去術を実施した. 術前のcomputed tomography (CT) で動静脈瘻が疑われ, day2の脳血管撮影で左中硬膜動脈から浅中大脳静脈・上眼静脈への瘻孔 (中硬膜動静脈瘻) と内頸動脈分枝から海綿静脈洞への瘻孔 (頸動脈海綿静脈洞瘻) が確認された. Day4に中硬膜動静脈瘻をコイル塞栓した. 頸動脈海綿静脈洞瘻は出血リスクが低く保存的加療とした. 頭頸部切創・急性硬膜外血腫の適切な治療と中硬膜動静脈瘻・頸動脈海綿静脈洞瘻の迅速な診断・治療により良好な転帰を得た.

  • 安武 祐貴, 上村 吉生, 大平 将敬, 稲葉 大地, 勝江 達治, 長間 将樹, 吉原 秀明, 谷口 昇
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 4 号 p. 364-369
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/17
    ジャーナル フリー

     大腸外科領域で術中の腸管血流評価方法としてIndocyanine green (以下ICG) 蛍光法が注目されているが外傷領域で用いられた報告例はまだ少ない. 我々は鈍的外傷による外傷性消化管損傷における腸管切除範囲決定に術中ICG蛍光法が有用であった症例を経験した. 症例は37歳, 男性. 約3mの高さから墜落し受傷した. 当院病着後の造影CTにて腹腔内出血, 腸間膜損傷を認め緊急開腹術を施行した. 循環動態が安定していたため, 一期的腸管吻合の方針とした. 術中ICG蛍光法を用いて腸管血流を評価したうえで結腸切除範囲を決定し, 縫合不全のリスクを回避した. 術後は合併症なく良好に経過し退院となった. 外傷症例においてもその評価方法が有用であることが示唆された.

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