行動分析学研究
Online ISSN : 2424-2500
Print ISSN : 0913-8013
ISSN-L : 0913-8013
研究報告
自閉スペクトラム症児の朝運動への参加を促すための方略――対象児の「特定の対象への強い興味」を取り入れたビデオ教材の効果の検討――
高橋 彩大竹 喜久
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 31 巻 2 号 p. 132-143

詳細
抄録

研究の目的 対象児が強い興味を示す対象(以下、ヒーロー)をモデルとして利用した方略であるビデオヒーローモデリング(VHM)とビデオセルフヒーローモデリング(VSHM)の効果を検討した。研究計画 行動間多層ベースラインデザインを用いた。参加者 知的障害特別支援学校小学部1年に在籍する自閉スペクトラム症(ASD)男児1名に対して介入を行った。場面 学校の運動場で実施される、朝運動の4つの下位活動(パラバルーン、ウォーキング、ランニング、体操)に対して介入が行われた。介入 標的行動が期待される朝運動場面の直前、対象児にとってのヒーローが標的行動のモデルを提示するビデオ(VHM)を視聴する機会を設定した。さらに、VHM期の後にはASD児がヒーローとともに望ましい行動に従事し、ヒーローがそれを賞賛するビデオ(VSHM)を導入した。行動の指標 各下位活動への参加を評価した。パラバルーンに関しては4段階のレベルを設定し評価した。それ以外の行動については10秒間の部分インターバル記録法を用いて評価した。結果 パラバルーンとウォーキングは、VHM導入後に行動が生起し始め、VSHM導入後に行動が安定した。ランニングはVSHM導入により、安定的に行動が生起するようになった。体操は介入なしに行動が安定して生起するようになった。結論 VHM及びVSHMに一定の効果が示された。今後、VHMやVSHMの追試をするとともに、どのような児童・行動に有効であるのかを検討していく必要がある。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本行動分析学会
次の記事
feedback
Top