2017 年 31 巻 2 号 p. 144-152
研究の目的 家庭場面で学習課題の課題従事時間の割合が低い自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害のある小学生男児に対し、家庭場面で自己記録を行うことで課題従事時間の割合と非課題従事行動生起率に影響を与えることができるか検討した。また、対象児のみの場面で自己記録を正確に行い、課題従事時間の割合と非課題従事行動生起率に影響を与えることができるか検討した。研究計画 チェインジング・コンディション・デザインを用いた。場面 対象児の家庭で実施した。参加者 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害のある小学校2年生男児が対象であった。介入 教示期では、対象児が課題に取り組む直前に、ベースライン期で見られていた非課題従事行動と望ましい課題従事行動を示し、課題従事行動を行うように教示した。自己記録とトークンエコノミーシステム期では、3分間ごと、課題従事行動の生起・非生起を記録し、対象児と指導者の記録が等しい数のトークンを対象児に与えた。対象児のみの自己記録期では、対象児に3分間ごと、自己記録をするように伝えた。行動の指標 教示、自己記録とトークンエコノミーシステム、対象児のみの場面における自己記録による課題従事時間の割合と非課題従事行動生起率を従属変数とした。結果 自己記録とトークンエコノミーシステムを導入することで、非課題従事行動生起率が減少し、課題従事時間の割合が増加した。トークンエコノミーシステムを除去した対象児のみの自己記録期においても効果が維持した。考察 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害のある小学校2年生の児童が自己記録を習得し、対象児のみの場面においても正確に実施できることが確認できた。