行動分析学研究
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テクニカルノート
大学生の手書き行動を測定する小型装置の開発
吉岡 昌子藤 健一
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2019 年 33 巻 2 号 p. 110-117

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抄録

本研究の目的は、大学生の手書きによるノートテイクを教室場面で測定するための安価で移動の容易な小型装置を開発することであった。装置はボールペンにワイヤレス・マウスの左ボタンの回路と接続した小型スイッチを挿入し、マウスのレシーバを介して、スイッチの信号をコンピュータに送信する仕組みとした。記録はVisual Basic for Application®を用いた。計64名の大学生を対象として3回の性能試験を行った。参加者は1つの条件につき10字からなる文を6回筆記した。字の1画を1反応とみなし、スイッチが検出した筆記反応数、および、1秒あたりの筆記画数(処理速度)を分析の指標とした。第1次試験では3種の小型スイッチを比較し、常時閉回路をもつプランジャ型スイッチが筆記反応の検出に最も適することが分かった。このスイッチによる測定精度を高めるため、スイッチの押し込み量の減少による、反応検出の所要時間の短縮や、筆圧がスイッチの動作値以上に保たれるよう、書き手に検出状況を知らせるためのボールペンへのLEDの装着などを行った。これらの改良により、第3次試験では楷書の場合、総画数に占める筆記反応数の割合の平均が98.5%となり、大学生の手書き行動の測定に実用可能な精度が得られた。また、機械的振動を用いて装置の追従限界周波数を調べた結果、手書き反応を充分に追従できることを確認した。

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© 2019 一般社団法人 日本行動分析学会
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