行動分析学研究
Online ISSN : 2424-2500
Print ISSN : 0913-8013
ISSN-L : 0913-8013
実践報告
統合失調症をもつ人に対するセルフモニタリングによる再入院予防支援の効果
川上 英輔
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 37 巻 1 号 p. 48-59

詳細
抄録

研究の目的 入院を繰り返していた統合失調症をもつ50代女性に対し、早期警告サイン(early warning signs;以下、EWS)として取り挙げた睡眠の変化および妄想、幻聴について、セルフモニタリングによる支援を実施し、再入院予防の効果について検討することを目的とした。研究計画 ABB’+フォローアップデザインを用いた。場面 精神科病院のデイケアセンターにおいて実施した。対象者 統合失調症をもつ50代女性であった。介入 介入1の睡眠のセルフモニタリングでは、睡眠記録の確認を行い、定時起床就寝できたときに賞賛した。介入2の感情・幻聴のセルフモニタリングでは、介入1の手続きに加え、感情記録および幻聴記録の確認を行い、対処行動を記入できたときに賞賛した。フォローアップでは、睡眠記録の確認を継続した。行動の指標 社会参加の割合、妄想関連行動の割合、定時起床就寝および不眠の割合、幻聴記録の割合を指標とした。結果 介入1では、社会参加の割合が増加し、妄想関連行動の割合が減少した。介入2では、妄想関連行動の割合と幻聴記録の割合が減少した。フォローアップにおいて、対象者は1か月間入院したが、その後10年以上、再入院せず地域生活を送れた。結論 対象者による継続的なEWSのセルフモニタリング、および支援者とのデータ共有を可能にする介入が、再入院の予防と社会参加の促進に有効であった。

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本行動分析学会
前の記事 次の記事
feedback
Top