2022 年 37 巻 1 号 p. 60-67
本論文の目的は、精神科臨床領域での事例を、一般論文や実践報告論文として「行動分析学研究」に掲載する意義と方略を明示し、その成果物としての論文の機能を討議することである。まず、臨床現場で経験する事例を論文にする意義について、融合領域の創出、系統的追実践・追研究という点から論述した。次に、論文の機能について、読み手行動への強化、書き手行動への強化、著者と読者との相互作用をどのように増やすかを検討した。その後、論文の構造について、以下のように論述の枠組みをテンプレートにすることで、執筆、通読、査読の効率化を図ることを提案した。疾患・症状・行動、生活歴と環境、行動の機能アセスメント、環境の生態学的アセスメント、支援方法、倫理、従属変数、研究計画、結果、考察。最後に、特集号で掲載される、5件の論文へのコメントを加えた。論文執筆こそが、様々なところで行われている事例検討によって得た経験を読者と共有し、行動ウェルネスを実現する道筋であることを主張した。