生物教育
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研究報告
アブラナ科植物Rorippa aquaticaの再生能力に注目した栄養生殖の教材化と授業実践
郡司 玄天野 瑠美金子 真也Ferjani Ali木村 成介
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2019 年 60 巻 3 号 p. 137-147

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抄録

中学校の理科第2分野では生物の有性生殖と無性生殖の特徴について観察を通じて学ぶこととされている.しかしながら,特に無性生殖については,その過程を簡便に観察できる教材は限られていた.本研究では,無性生殖,その中でも特に栄養生殖に関する授業において活用できる実験教材の開発を目指して,Rorippa aquaticaというアブラナ科イヌガラシ属の多年生草本植物に着目した.R. aquaticaは栄養生殖する能力が高く,葉を切断して湿ったところに置いておくと,葉片の根元側(基部側)の断面に新しい個体を再生する.この過程には特別な条件は一切必要なく,水分状況さえ適切であれば2週間ほどで再生が完了し,また,経時的な観察も容易であることから,生徒実験の教材として適していると考えた.そこで本研究では,R. aquaticaの簡便な栄養生殖法と観察法を確立し,中学校第3学年の理科授業において教育実践を行なった.今回の授業時間の配当は2時間とし,1時間目には身近な野菜であるジャガイモを例に無性生殖の特徴について学習し,生徒実験としてR. aquaticaの葉を切断し栄養生殖を開始した.2時間目までの2週間程経時的な観察を行なったところ,すべての生徒が栄養生殖の過程を観察することができた.授業後のアンケートでは,76%の生徒が授業を通じて生物の生殖について興味をもったと回答した.以上の結果から,R. aquaticaは中学校理科で栄養生殖を学ぶための有効な実験教材として期待できる.

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© 2019 一般社団法人 日本生物教育学会
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