2026 年 63 巻 2 号 p. 2_1-2_9
ウクライナは2010年代の銀行改革の流れとIT関連の発達から金融全般のデジタル化が進行していた.従来からの金融包摂の低さを補う形で進行し,仮想通貨も普及しつつあった.2020年代に入ると各国の中央銀行の中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入の流れの中でバハマなどでCBDCが導入され,スウェーデン,中国で実験が進行しつつある.途上国では金融包摂やコストカット,先進国はキャッシュレス推進を期待した.他方,金融仲介機能への影響,プライバシー保護など導入には慎重な意見も根強い.ウクライナ国立銀行(NBU)もCBDCであるe-hryvniaの導入検討を始めた.2022年2月以降の展開の中でCBDCの位置づけも変わりつつも,仮想通貨で受け取った寄付との親和性など導入の検討は続いていた.この展開の中では海外に避難民との国境を越えた支払いを容易にし,通貨主権を補完する狙いが加わった.ここでは国家やハード通貨への信頼も揺らぐ中でのウクライナのCBDC導入と役割を考察する.