応用教育心理学研究
Online ISSN : 2436-6129
Print ISSN : 0910-8955
青年期における自傷行為の開始・維持・改善と「居場所」との関係- 教員の支援方法に関わる質的分析 -
佐野 和規
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2015 年 32 巻 1 号 p. 43-59

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抄録
本研究では,定時制高校の教育相談担当教員として,自傷をする生徒を支援する中で,12名から自傷の開始・維持・改善に関わるインタビュー記録を得,質的データ分析法を用いて分析した。その際,自傷行為をする生徒が語る「居場所」をWinnicott の「抱える環境」の問題と捉えた。その結果,18 の概念と3 つのカテゴリーを得た。そして,家庭・学校も含む外的環境に全く居場所がない絶望的な「絶対的居場所欠損状態」を経て,自己の身体や自傷行為のみを居場所とせざるをえない「自傷行為の居場所化」に至り,自傷行為が開始維持される。その後,「改善キーパーソンの継続的関わり」という概念を中心とする「居場所獲得による自傷改善」によって自傷から回復するという結論を得た。その分析を通じて,当事者の自傷をせざるをえない絶望的な心理を理解するための有効な概念やカテゴリーを得ることができたとともに,自傷改善のためには,学校職員や学校で出会う友人等が改善キーパーソンとなって「抱える環境」を長期的に提供することの重要性を指摘した。
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© 2015 日本応用教育心理学会
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