2021 年 38 巻 1 号 p. 47-61
本研究の目的は,選択理論心理学を学び教育現場で実践している教師の思考と行動の変容を明らかにし,選択理論の学びが周囲との関係構築と仕事に対するモチベーションの維持に有効であるかを検討することである。X 県内の選択理論を教育現場で実践し,小学校中学校に勤務するまたは勤務経験のある3 人の教師に半構造化インタビューを行い,SCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析を行った。その結果①児童,生徒との関わりについてはどの教師も自身の思考と行動を変化させ児童,生徒の愛・所属の欲求を満たす関わりをし,児童,生徒との良好な人間関係構築に努め,自身の愛・所属の欲求も充足しようとしている様子が見られた。良好な人間関係は教師自身の欲求充足につながり,幸せにもつながることが明らかとなった。②同僚との関わりについては,どの教師も自身の考えと異なる同僚や周囲から孤立している同僚に対し,心理的距離をとるのではなく日々のコミュニケーションを通じてその同僚のことを理解し,思いを汲み取ろうとしていた。それによって同僚の思考と行動においてのみ変容が見られた。この結果,選択理論を学んだ教師側に共通して意欲的に業務に取り組む姿勢が示された。