抄録
自尊感情は個人の言動や意識態度を基本的に方向づけるとされているため,人格形成の基礎を培う幼児期に,周囲の大人が意識して幼児の自尊感情を育むことが望まれる。そこで,保育者や保護者が日々の生活から幼児の姿を容易に確認することができ,自尊感情を育む保育実践の教育効果測定指標となる幼児用自尊感情尺度の開発を行うことを目的とした。使用者のわかりやすさを重視して保育者や保護者から収集した文言で項目を作成し,因子分析を行った。結果として,2因子10項目(第1因子:自己信頼・主体性,保育者版 α=.87,保護者版 α=.81,第2因子:協調性・達成感,保育者版 α= .80,保護者版 α=.74)が得られた。次に,再現性調査(第1因子:保育者版 r = .72 ,保護者版 r= .82,第2因子:保育者版 r= .65,保護者版 r= .74)を行い,信頼性が確認された。また,保育者版の各因子における担任保育者と担任外保育者による保育者評定では,高群,低群ともに有意差が見られ,妥当性が確認された。