応用教育心理学研究
Online ISSN : 2436-6129
Print ISSN : 0910-8955
39 巻, 2 号
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  • 勝浦 美和, 浜崎 隆司
    2023 年 39 巻 2 号 p. 3-21
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー
    自尊感情は個人の言動や意識態度を基本的に方向づけるとされているため,人格形成の基礎を培う幼児期に,周囲の大人が意識して幼児の自尊感情を育むことが望まれる。そこで,保育者や保護者が日々の生活から幼児の姿を容易に確認することができ,自尊感情を育む保育実践の教育効果測定指標となる幼児用自尊感情尺度の開発を行うことを目的とした。使用者のわかりやすさを重視して保育者や保護者から収集した文言で項目を作成し,因子分析を行った。結果として,2因子10項目(第1因子:自己信頼・主体性,保育者版 α=.87,保護者版 α=.81,第2因子:協調性・達成感,保育者版 α= .80,保護者版 α=.74)が得られた。次に,再現性調査(第1因子:保育者版 r = .72 ,保護者版 r= .82,第2因子:保育者版 r= .65,保護者版 r= .74)を行い,信頼性が確認された。また,保育者版の各因子における担任保育者と担任外保育者による保育者評定では,高群,低群ともに有意差が見られ,妥当性が確認された。
  • 永井 明子
    2023 年 39 巻 2 号 p. 23-37
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー
    道具的関係性攻撃が仲間関係の認知に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,979 人の小学4~6年生を対象に,仲間関係の質(Best Friend との相手理解,自己開示の程度)と量(相手理解と自己開示をしている/されているクラスメートの人数)および攻撃性(反応的表出性攻撃,反応的不表出性攻撃,道具的関係性攻撃)について質問紙で調べた。攻撃性と性別から仲間関係への影響を明らかにするために,2要因分散分析を行った。道具的関係性攻撃のみが高い児童は低攻撃児に比べて,Best Friend から自分に対しての自己開示が高いと認識していた。さらに,低攻撃児に比べて,自分に対して自己開示している,または相互に自己開示していると認識しているクラスメートの人数が多かった。最後に,高道具的関係性攻撃男児は低攻撃男児に比べ,Best Friendからの相手理解,自己開示を受けていると認知しており,同様に,高道具的関係性攻撃男児は低攻撃男児に比べ,自分に対して相手理解,自己開示を示していると認識しているクラスメートの人数が多かった。
  • 安藤 聡一朗
    2023 年 39 巻 2 号 p. 39-52
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,中学生の心の居場所感と自己表現に伴う感情との関連とを調べ,教師が居場所感を感じていない中学生を早期に発見することにつながる要因を見出すことである。関西の公立中学校一校で,中学生232名を対象に,「自己表現と自己の役割」に関する自由記述,居場所の心理的機能尺度, 自己表現スタイル尺度を含む調査を実施した。居場所の心理的機能尺度を投入変数としたクラスター分析から,居場所感の高・中・低群の3つの類型が抽出された。分散分析とFisherの直接確率計算法の結果から,居場所感が高い中学生は,自己表現に伴うポジティブ感情が多く,他者との調和を乱すリスクを冒しても言うべきことは言う傾向があることが明らかになった。また,居場所感が中程度の中学生は人間関係に腐心し,場面によっては非主張的な自己表現や間接的な自己表現が多くなることが示された。最後に,居場所感が低い中学生は,アサーティブな自己表現が少なく,感情に乏しい自己表現が多い傾向がみられた。中学生の,友人と居る場で安心して自由に振舞えているか,場面に則した感情表現ができているか否かは,教師など周りの大人が居場所感の高低を知る一つの指標になることが示されたと言える。
  • 大西 康平
    2023 年 39 巻 2 号 p. 53-66
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究は,専門学校生を対象に記憶の種類に関する説明文を学習材料とし,学習時や説明産出時に教示する説明相手の違いによる学習効果について検証した。説明相手は,学習内容に関する既有知識の多寡(年下と教授)で設定したが,実験1では相手の違いによる効果は説明予期時のみではみられなかった。次に,実験2では説明相手を教示するタイミング(説明予期時や説明文産出時)による学習効果ついて検証した。その結果,年下を教示した上で学習を行い,同様の相手に説明文産出を行うことで学習効果があることが示された。効果が得られた理由を明らかにすべく,産出された説明文の内容を比較した。その結果,説明予期時に具体的な説明相手を教示せず,説明文産出前に教示を行った場合には,学習内容について理解の深さが伴わない傾向が示された。
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