抄録
症例は83歳,女性.高血圧,脂質異常症の既往あり.飲酒,喫煙歴なし.2009年4月15日,心窩部痛,嘔気,食欲不振にて救急外来受診.血液検査にて貧血を指摘され,腹部CTにて肝外側区域の腫瘍と,その破裂による出血を疑われ,肝動脈塞栓術を施行された.術前検査所見ではごく軽度のAST,γ-GTPの上昇を認めたが,肝炎ウィルスマーカーおよび抗核抗体は陰性であった.AFPの著しい高値(44,000)を認めた.肝細胞癌の診断にて同年5月25日肝左葉切除術を施行した.切除標本の癌部は高分化型の肝細胞癌,背景肝は脂肪変性,軽度の繊維化,炎症細胞の浸潤を認めることからsteatohepatitis,また,病歴を踏まえて,非アルコール性脂肪肝炎に合併した肝細胞癌と診断した.本症例のように肝硬変にまで至っていない非アルコール性脂肪肝炎からの肝細胞癌合併についての報告は比較的少ないが,高齢で肥満や糖尿病,脂質異常症などの基礎疾患がみられる場合は注意深い経過観察が必要である.