2017 年 42 巻 1 号 p. 85-90
症例は81歳男性.主訴は全身倦怠感,便秘.採血でHb 8.3g/dLと貧血を認め入院した.大腸内視鏡検査で直腸Rbに全周性の潰瘍を伴う腫瘍性病変を認めた.CTとMRIで前立腺浸潤の所見と仙骨浸潤を疑う所見を認め,T4b(前立腺,仙骨),N0,M0,cStage Ⅱと診断した.S状結腸双孔式人工肛門造設術を施行し,mFOLFOX6療法を6回施行した.6回目の化学療法後に,腫瘍部穿通による殿部膿瘍,DICを合併した.その後のCTとMRIで,前立腺浸潤の所見と仙骨浸潤を疑う所見が消失しており,根治的切除が可能と判断し,化学療法終了から7週後に腹会陰式直腸切断術を施行した.組織学的効果判定はGrade 2で,病理診断はT3,N0,M0,pStage Ⅱで,癌の遺残は認めなかった.術後20カ月現在,再発なく外来フォロー中である.局所進行直腸癌に対しての術前化学療法は術前化学放射線療法に匹敵する局所効果が得られる可能性が期待できると思われた.