日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
症例報告
肝内胆管癌と鑑別を要した肝炎症性偽腫瘍の1例
阿部 恭平二川 康郎岡本 友好兼平 卓矢永 勝彦
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 43 巻 2 号 p. 253-257

詳細
抄録

症例は81歳男性.健診にて異常を指摘され当科紹介受診となった.左肝を占拠する5cm大の腫瘤を認め,同腫瘤の末梢側胆管は拡張し,リンパ節腫大や遠隔転移は認めなかった.腫瘤形成型肝内胆管癌の診断にて左肝切除を施行し,術後第8日に軽快退院となった.摘出検体の肉眼所見では5cm大の境界不明瞭な黄白色の硬化腫瘤を認め,最終病理診断は肝炎症性偽腫瘍(以下,肝IPT)であった.本症は診断が得られれば保存加療や経過観察が第一選択とされるが,①症状が持続する,②腫瘍により重要臓器が圧排される,③確定診断がつかない,などで手術が検討される.しかし画像的特異所見はなく,また炎症の時期により造影パターンが多様に変化するため,肝悪性腫瘍との鑑別は困難であるとされる.今回,術前画像では肝IPTの診断が困難であり肝切除を行った1例を経験した.肝IPTは肝腫瘍を認めた際に鑑別診断として挙げるべき疾患の一つと考えられた.

著者関連情報
© 2018 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top