日本外科系連合学会誌
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症例報告
PD術後8年目に下血にて発症した残膵癌の1例
阿部 恭平二川 康郎柴 浩明宇和川 匡石田 祐一矢永 勝彦
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2018 年 43 巻 2 号 p. 258-264

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抄録

症例は83歳女性.既往歴として,8年前に十二指腸乳頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術と2年前に横行結腸癌に対し右半結腸切除を施行されている.今回は貧血と下血を主訴に当院受診した.腹部CTにて主膵管内に腫瘍を認め,小腸内視鏡にて膵空腸吻合部に腫瘍出血を認め,経カテーテル的血管塞栓術を施行し止血,軽快退院となった.小腸内視鏡の生検結果は高分化型管状腺癌であったが,免疫組織学的染色で結腸癌の発現形式とは異なること,CT上主膵管を主病変としていることより,結腸癌の転移再発は否定的であった.また,乳頭部癌再発は初発乳頭部癌がリンパ管浸潤,静脈浸潤なども認めず,pStage ⅠAであることから否定的と評価し,残膵癌と診断した.乳頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術後の異時性残膵癌は稀ではあるが,同病態の発症を念頭にした長期の経過観察が必要であると考える.

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© 2018 日本外科系連合学会
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