2020 年 45 巻 2 号 p. 161-167
82歳女性.8年前から胃穹窿部が胸腔内に嵌頓する食道裂孔ヘルニアがあり,徐々に陥入する胃の増大を認めたため,腹腔鏡下に食道裂孔ヘルニア手術施行した.術後腹腔内出血を併発したが,保存的加療を行い18病日に退院した.術後6カ月して通過障害を主訴に来院,上部消化管内視鏡で食道内に迷入したメッシュが原因の通過障害を認めた.経口内視鏡を併用し,腹腔鏡下にメッシュ除去術を施行した.食道5時方向に認められたメッシュ迷入に対して3時から反時計回りに8時までメッシュを摘出した.食道壁は長軸方向に2cm開放していたため,全層縫合を行った.大網を縫合部に被覆し手術終了とした.その後,遺残メッシュによる狭窄症状を再度認めたが,上部内視鏡的に摘除を行い,その後狭窄症状は認められていない.食道裂孔ヘルニアに対するメッシュを用いた補強術は有用な方法と考えられるが,合併症としてのメッシュ迷入はその頻度は低いものの今後増加が見込まれる重要な合併症である.