1996 年 21 巻 6 号 p. 1003-1006
皮膚潰瘍を形成した乳腺葉状腫瘍を経験した。症例は46歳, 女性で, 右乳房の無痛性腫瘤が急速に増大し, 皮膚に潰瘍が生じ, これを主訴に外来受診, 入院となった。悪性腫瘍を疑い, 定型的右乳房切除術を施行したが, 組織学的には良性腫瘍であった。乳腺葉状腫瘍の本邦報告例のうち, 皮膚潰瘍形成例は自験例を含め19例であった。皮膚潰瘍は, 腫瘤の急速な増大により皮膚を圧迫, 伸展, 壊死に陥る結果, 生じることが重要視されている。自験例の腫瘍径5.5cmは本邦報告例で最小であった。自験例は良性腫瘍であったが, 悪性例は19例中5例 (26.3%) にみられることから, 臨床的には悪性腫瘍を疑い定型的乳房切除術を施行した。5年経過観察し局所再発はみられていない。