日本外科系連合学会誌
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Low Dose FAPを用いた肝動注化学療法が著効したAFP産生胃癌多発性肝転移の1例
高山 敏夫菅野 雅彦鎌野 俊紀鶴丸 昌彦林田 康男小林 滋
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2002 年 27 巻 6 号 p. 902-907

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抄録

症例は49歳, 男性。上部内視鏡検査にて3型の胃噴門部癌を認め, 腹部CT検査では肝両葉に多発性肝転移を認めた。血清AFPが5,529ng/mlと高値を示していることからAFP産生胃癌多発性肝転移と診断した。自験例では食物の通過障害症状が強く認められ, また根治的切除が不可能との判断でquality of lifeを考慮し, 胃全摘, D1リンパ節郭清術を施行後, 肝動注化学療法を行った。病理組織学的所見では, type3, mod~por diff. adenocacarcinoma, se, ly3, v3, n8/33でstageIV, 根治度Cであった。またAFP免疫組織染色では腫瘍細胞が陽性に染色された。術後肝動注リザーバーを留置し, 動注用infusion pumpを用いてADR : 30mg/body/bolus, ia. (day 1), 5-FU : 250mg/body/24hrs, cia. (day 1~14), CDDP : 10mg/body/30min, ia. (day 1~14/隔日) を投与した。2週間休薬後外来通院にてリザーバーより5-FU : 250mg/body/2hrs.ia. (1回/week), CDDP : 10mg/body/30min, ia. (1回/week) を動注し, 10週間治療後2週間休薬を1コ―スとし2コース施行した。同時に5'-DFUR 800mg/dayを1週間経口投与したが強い嘔吐症状が出現したため5'-DFURの投与を中止した。手術4カ月後のAFP値は5,529ng/mlから5ng/ml, またCEA値は43.4ng/mlから3.8ng/mlへとそれぞれ正常値まで低下し, また手術9カ月後の腹部CT検査では肝転移巣は完全に消失していた。しかし手術10カ月後よりCEA値が14.7ng/mlへ上昇傾向に転じたため, TS-1 100mg/dayを4週間内服, 2週間休薬を1コースとする経口投与を2コ―ス施行した。術後1年7カ月では画像上明らかな再発を認められなかったがCEA値29.9ng/ml, AFP値148/mlへと上昇しているため再発を強く疑い, 今後さらに全身精査が必要と考えられた。

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