日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
ファロー四徴症,肺動脈弁欠損に対する新生児期姑息術の工夫
木南 寛造森田 紀代造黄 義浩篠原 玄橋本 和弘
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2015 年 44 巻 2 号 p. 97-102

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抄録
ファロー四徴症,肺動脈弁欠損症に対する手術方針としては,近年の報告では一期的心内修復術が主流であるが,新生児期や乳児期に介入した例の予後は死亡率17~33%と必ずしもよくはない.今回われわれは新生児期開心術の回避を目的にePTFEパッチを用いた主肺動脈閉鎖,肺動脈縫縮とともにePTFE graftによる体肺動脈シャントを行う新生児期姑息術を用い良好な経過を得た2症例を経験した.症例1は生後7日の男児,出生直後から進行性に肺動脈拡張および呼吸不全が増悪し,拡張した肺動脈による左気管支とともに,上大静脈狭窄,左房圧排による左室容積減少等の心血管系異常を認め日齢7で同手術を施行した.術後肺動脈の拡張はPA index(mm2/m2)術前2,550から525と改善を認め,それに伴い上大静脈狭窄,気管支圧迫が解除され,また左房圧排は改善し左室容積は正常化した.症例2は生後16日目の男児,急速に主肺動脈径の増大(8 mmから17 mm)が見られ,CT上は気管支圧迫の所見は見られなかったが手術適応と考え日齢16に同手術を行った.術後肺動脈の拡張はPA index(mm2/m2)術前1,200から385と改善が得られ,その後良好な経過にて1歳0カ月時に心内修復手術を施行した.同疾患で新生児期に手術介入を余儀なくされる場合,われわれの方針は一期的心内修復に比べより安全性が高く有用であると思われた.
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