日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
外傷性三尖弁閉鎖不全症に対し弁形成術を施行した1例
白岩 聡本田 義博榊原 賢士葛 仁猛加賀 重亜喜鈴木 章司中島 博之
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2018 年 47 巻 3 号 p. 128-132

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抄録

症例は63歳男性.46年前にバイク事故で1カ月の入院歴があり,その翌年より心雑音を指摘されるようになった.45歳から発作性心房細動が出現し,62歳からは心房細動が慢性化した.同時に労作時の息切れや動悸が増悪したため,循環器内科へ紹介された.心エコーで前尖の広範な逸脱による重度三尖弁逆流を指摘され,手術の方針となった.右房を切開し確認すると,三尖弁前尖の腱索断裂があり,前尖-中隔尖交連部付近の弁輪部に裂孔を認めた.裂孔部は縫合閉鎖し,ePTFE糸を用いた腱索再建および人工弁輪による弁輪縫縮を施行した.また心房細動に対しMaze手術を併施した.術後は三尖弁逆流が良好に制御され,さらに洞調律で軽快退院した.外傷の既往および術中所見から,最終的に外傷性三尖弁閉鎖不全と診断した.本邦で報告された外傷性三尖弁閉鎖不全に対する自己弁温存手術は,検索し得た範囲で20例であった(自験例含む).ほぼ全例において前尖が障害されており,腱索断裂が最多であった.その他,乳頭筋断裂,弁尖の損傷など病態は多岐にわたっていた.本疾患は稀であるが,近年多く施行されている僧帽弁形成術の応用が可能であり,自己弁温存を目指す価値が十分にあると思われた.

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