2019 年 48 巻 2 号 p. 138-141
症例は47歳男性.自宅で胸背部痛を自覚し当院に救急搬送された.胸腹部造影CT検査でStanfordA型急性大動脈解離と診断された.腹腔動脈は血流をみとめず上腸間膜動脈も血流は遅延していた.心嚢液は少量で循環動態は安定していたが代謝性アシドーシスが進行して臓器虚血が疑われたためcentral repairに先行し血管内治療による腹部分枝の血行再建を行い,その後大動脈全弓部人工血管置換術を施行した.術後一時的に対麻痺を認めスパイナルドレナージと血圧を昇圧することで回復し術後第68病日独歩退院となった.臓器虚血を伴うStanfordA型急性大動脈解離に対し血管内治療を先行させ,良好な結果を得たため文献的考察を含めて報告する.