日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
本態性血小板症を合併した僧帽弁置換術前に化学療法を調節した1例
畠田 和嘉石川 智啓宮島 敬介高橋 政夫
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2019 年 48 巻 6 号 p. 401-404

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抄録

本態性血小板血症 (essential thrombocythemia : ET) は慢性骨髄増殖性疾患に分類される比較的稀な疾患である.血小板数の異常増加となり,血栓形成傾向と易出血性の両方を発症しやすくなる.今回われわれは術前すでにETの診断がなされ抗悪性腫瘍剤ハイドレア (ヒドロキシカルバミド) による治療中であった僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症の患者に僧帽弁置換術を予定した.感染と創傷治癒遅延を憂慮し,ハイドレアを術前2週間前に中断したところ血小板数が上昇しすぎたため,ハイドレアを術前の半量で再開,約1週間で調整し直し手術を施行した.術中はヘパリンでACTをコントロールできたが,若干のヘパリン抵抗性を認め通常より投与量が多くなった.術後はPseudomonas aeruginosaによる尿路感染とE. coli ESBL産生の多剤耐性菌による肺炎を起こしたが治癒できた.術中術後通して出血や血栓塞栓症もなく術後25日目に自立歩行退院となった.

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