2020 年 49 巻 1 号 p. 12-15
症例は70歳の女性.脳出血による右片麻痺のため長期臥床状態,日常生活動作は全介助の状態であった.4年前に肺塞栓症で外科的血栓除去術を施行された.1年前に心不全症状があり,前医にて収縮性心膜炎と診断され,薬物治療をされていた.今回,発熱を主訴に前医を受診し,心エコーで心嚢液貯留を認め,心タンポナーデを疑われ当科紹介入院となった.心嚢穿刺ドレナージで膿性の排液があり,化膿性心外膜炎の診断となった.膿瘍の培養からはBacteroides fragilisが検出された.抗菌薬治療による保存的加療では軽快せず,左肋間小開胸による心膜開窓術を施行した.術後経過は良好で胸水培養も陰性であった.化膿性心外膜炎は難治性で予後も不良な疾患である.今回,Bacteroides fragilisによる化膿性心外膜炎という稀な症例に対して左肋間小開胸によるアプローチを選択し,良好な成績を得られたので報告する.